「精神論」というものがある。それはえてして何も解決しないが、逆に既存秩序となんの摩擦も生まない。なので、とりあえずその場を丸く治めたい、だけれど無責任などと言われたくない人にとっては実に使い勝手が良い。
たとえば、旧日本陸軍の至宝、牟田口(むたぐち)中将の以下の訓示は、あまりにも有名だ。
「日本軍と言うのは神兵だ。神兵というのは、食わず、飲まず、弾がなくても戦うもんだ。それが皇軍だ。それを泣き言言ってくるとは何事だ。弾がなくなったら手で殴れ、手がなくなったら足で蹴れ、足がなくなったら歯でかみついていけ!」(『太平洋戦争 日本の敗因〈4〉責任なき戦場 インパール』より)
偉そうなことは言っているが、「弾もメシも全然足りてない」というシステム上の欠陥はまったく解決されていない。要するに、責任者が面倒くさがって「おまえらで何とかしろよ」と言っているだけの話だ。精神論とは、えてしてこういった責任放棄の産物である。
もちろん、わが国が世界に誇るこの美しい文化は、現代でも大活躍だ。筆者は20代の頃、業務の効率化を上に提案したら、
「いいか、仕事を減らそうとするやつは敗北主義者だ、いついかなる状況でも、仕事とは常に増やすものだ」
と部長に説教されたことがあるが、ああいうのも一種の精神論だろう。下手な業務プロセスの見直しよりも、彼のような高給取りの無駄飯食いをリストラするほうがずっと効率的である。
(続く)
| 太平洋戦争 日本の敗因〈4〉責任なき戦場 インパール (角川文庫) | |
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