2024年 3月 29日 (金)

社長がいないと「サボっちゃえ」 会社が傾きそうです

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   中小企業の業績は、社員一人ひとりの働きに支えられている。社長のリーダーシップが利いているうちはよいが、手綱がゆるむと態勢を持ち直すのが大変。ある会社では、新規事業で社長が外出しがちになったら、社員がダラけるようになってしまった。

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「担当がたるんどる」と取引先からクレーム

――広告代理店の総務担当です。30名ほどの会社で働いています。
   社長は大手広告代理店でトップ営業マンだった人。20年前に独立し、創業当初からリーダーシップを発揮して、社員を増やしながら会社を引っ張ってきました。
   一時は活気もあり業績も伸びていたのですが、リーマンショックで大手のクライアントが倒産して利益は一気に激減。ベテランに割増退職金を払って辞めてもらい、社長が駆けずり回って新しい取引先を増やしつつありますが、以前のような勢いはありません。
   というのも、社長が不在で目が届かないのをいいことに、仕事を怠ける社員が出てきたのです。社長が新規案件で多忙だという噂は耳にしてはいるものの、具体的に何をやっているのかは詳しく知らされていません。疑心暗鬼になった若手社員からは、

「取引先と毎晩飲みに行ってるらしいぜ。俺たちが遅くまで働いているのに」
「この会社、見捨てられているんじゃないか」
「仕事ぶりを見ていない社長に査定されてもな」
などというグチも聞こえてきます。
   社長に権限が集まっているので、代わりにみんなを引っ張る人も現れず、「やる気出ねえなあ」と言いながら外回りのフリをしている人も。そうこうするうちに、古くからの取引先から「担当者がたるんどる」とクレームの連絡が入ってしまいました。
   驚いた社長が全社員を集め、クレームの内容を知らせ、「これは担当だけの問題じゃない。今後は引き締めていくからな!」と活を入れましたが、私の目からはそんな危機感など知らん顔、という人が大半のように見受けられます。
   社長からは「とんでもないことになった。どうしたものか」と相談されていますが、どういった視点でテコ入れしていったらよいものでしょうか――

臨床心理士・尾崎健一の視点
「内発的」「外発的」動機づけを組み合わせる

   やる気のある人だけを残して人員整理をする方法も考えられますが、社員の大半がやる気を失っている状態では、そのような強攻策は組織の崩壊を招きます。全体の底上げをするマネジメントから着手するのが得策です。

   人にやる気を出させる方法には、「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」があります。前者は義務や賞罰によるもので、昇給や降格が代表的です。後者の「内発的動機づけ」は、自発的な関心や好奇心を高めるものです。いまの社員は、社長に惹かれて入社した人も多いのではないでしょうか。社長とのコミュニケーションを増やし、会社の状況やビジョンを語ってもらったり、社長自らがいきいきと仕事をする姿を示して「自分もああなりたい」という気持ちを高めてもらうのも手です。

   なお、外発的動機づけは直接的な効果が上がりやすいのですが、刺激が持続せず、報酬への要求だけがエスカレートすることもあります。効果が持続する内発的動機づけと組み合わせて進めることが必要です。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「権限委譲」と「問いかけ」で体制づくりをする

   社長の権限だけが大きすぎると、社長が不在のときに怠ける人が出てきます。20人台であれば社長ひとりで何とかなるかもしれませんが、それ以上になると社長の右腕となる人が不可欠です。権限を委譲し、社長がいなくても組織の引き締めや意思決定ができる人を育成しましょう。将来、組織の世代交代が必要なわけですから、社長の後釜は必要です。自分の持っている人脈や知識、ノウハウを伝えてください。

   また、社長自身が社員一人ひとりに物事を考えさせるよう仕向けることも重要でしょう。会社の課題について考えさせ、「君はどう思うの?」と意見に耳を傾けるのです。答えが自分の意に沿わないとしても、反射的に怒ったりしてはいけません。いいアイデアが取り入れられれば、社員は喜びと仕事のやりがいを感じますし、やる気も生まれます。創業者は「おれの会社はおれのもの」という考えが抜けないものですが、30人もいれば、いずれ会社は社長の手を離れていくものと考えるべきです。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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