テキトーな投票行動が、日本国に害悪を撒き散らす

2011/11/ 4 15:00
「選挙権は二十歳以上の全国民に与えられた権利である。なので、みんなできるだけ選挙に行って投票することが国民に課された使命である」

   こう思っている人が多いことであろう。国によってはオーストラリアのように投票が国民の義務となっていて、投票しないと罰金が課されるような国もある。

   しかし、実はこの考えには大いに問題がある。残念ながら選挙民の中には「自分はなんの関心も知識もないが、投票しないといけないから、いつもテレビで顔をみているあの人に投票しておこう」というようないい加減な人が少なからず存在するのだ。

   そして選挙で選ばれた政権の問題点が露呈すると「こんなはずではなかった」ということで「トップは交代せよ」と言い出すことになる。この繰り返しである。政治家を選んだのは自分自身なのだが・・・。

素人の直感だけに頼った判断は危うい

   政治というのはなかなか複雑で難しいものである。単にテレビで報道される事象を追ったりするだけでは、正しい判断に到達できない。

   「世間の常識」で判断してはいけないものが世の中にたくさんある。典型的なのが経済だ。たとえば「比較優位の理論」というのがある。貿易をすれば双方の国が利益を受けるというもので、これは経済学のABCのAであり、少しでも経済学を理解する人ならば当然に受け入れる考え方である。

   しかし、これは直感に反するものなので「輸入は悪だ」などというおかしなスローガンが世の中に跋扈したりする。ひどい時は「専門家はバカだ」などというようなわけのわからない非難が飛び交ったりする。

   ガリレオは「地球は太陽の周りを回っている」と言ったために宗教裁判にかけられ無期刑に処されたが、これを「昔の人は浅はかだった」などと言って切り捨ててはいけない。自然科学の問題について専門家の判断に耳を傾けずに自分で勝手な判断しようとする人は、今も絶えないからだ。

   放射能の危険性、といった問題については最先端の研究に委ねるしかないのに、素人が勝手に判断して「風評被害」を生んでいるケースは多い。自分が勝手に信じ込むだけならまだよいが、誤った信念が国民全部に影響を与えるようになることだけは避けてもらいたい。

(続く)

小田切尚登

経済アナリスト。明治大学グローバル研究大学院兼任講師。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ等の外資系金融機関で株式アナリスト、投資銀行部門などを歴任した。近著に『欧米沈没』(マイナビ新書)
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