2024年 4月 23日 (火)

犬がワンワン吠える家は、お金をなかなか返してくれない説

「お金を返せない人って、どんな人なんですか?」

   債権回収のお仕事をしていると、こんなことを聞かれることがあります。私はいつもこの質問の返答には困ってしまいます。

   なぜなら延滞される方というのは本当に千差万別で、特徴は一様に言い表し難いからです。「この人は信頼できそうだ!」と思って支払日を設定しても、初回の返済から連絡が取れなくなってしまったり、「この人大丈夫かな」と不安に思っていると、予想外にいきなりお金を稼いで全額返済してきたり…。

そういえば電話口でうるさかったような

犬には何回も襲われたからねー…(イラスト:N本)
犬には何回も襲われたからねー…(イラスト:N本)

   もちろん一般的に公務員などのお堅い職業では融資が通りやすいが、どんなに稼いでいてもなかなか通りにくい職業があるなど、審査の基準として設けられている項目はいくつかあります。

   でも、職業だけでは「この人は延滞しない」とは確実に言えず、その見極めができるようになるには、それ相応の時間と経験が必要になります。

「あ、いまエヌモトちゃんが話してた人、たぶん長期延滞するよ。不履行(入金の約束を破ること)したら、すぐ連絡とったほうがいいよ」

   まだ督促の仕事を始めて日が浅かったころ、私の横で電話を聴いていた先輩がボソリと言いました。彼女は債権回収歴20年超のベテランです。

   え、今の交渉のどこがダメだったんだろう。私「何日に入金いただけますか?」、客「○月×日に支払います」、私「金額は××円になります。よろしくお願いいたします」。怪しいところなんて、どこもなかったはずなのに。

   でもそのお客さまは、その後本当に支払いの約束を破り、しばらく音信不通になってしまったのです。やっと連絡が取れた時には、手元にまったく資金がない状態でした。

   「やっぱり長期延滞です。どうしてわかったんですか!?」。私は息せき切って先輩のところに駆け寄りました。先輩はなんの事もないかのように、

「犬が吠えてたから」

とひとこと言いました。い、犬ですか。そういえば電話の向こうで、お客さまの声が聞きづらいくらい、犬がうるさく吠えていたような…。

債権回収OL・N本(えぬもと)
某金融機関で債権回収部門に所属する20代OL。コールセンターで支払延滞顧客への督促を担当している。入社半年で3億円の回収を達成して頭角を現し、10万件の顧客を担当する精鋭チームに最年少で配属された実績を持つ。他人に強く言えない気弱な性格を逆手にとり、独自の「交渉メソッド」を開発。300人のオペレーターを指導しながら、年間2000億円の債権回収に奮闘している。好きなものは、ビールとスイカ。ブログ「督促(トクソク)OLの回収4コマブログ」。(本コラムは当事者のプライバシー保護のため、一部事実と変えている点があります。)
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