テレビから消えた「津波に襲われる人々」「運ばれる遺体」事実より無難の追求

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   何度か触れているが、放射能をめぐる週刊誌の論調が定まったようである。私なりに分けてみると、放射能絶対危険煽り派は「週刊現代」を筆頭に「週刊文春」「サンデー毎日」「週刊朝日」。自ら「安全デマ雑誌」と呼ばれようといとわないと宣言する「週刊ポスト」、それに「週刊新潮」は慎重派。

   このところ慎重派からの煽り派週刊誌批判が目立つ。ポストが現代を名指しで「『放射線量を低く出るように細工していた』というのは謀略史観過ぎる」と批判し、新潮は毎日の「セシウムの雨降りそそぐ列島被曝の戦慄」(6月5日号)、文春の「東京電力の大ウソ 放射能地獄に日本は陥ちた」(5月26日号)、現代の「子どもと女を守れ! 隠された放射能汚染を暴く」(6月4日号)をまとめて、扇情的な書き方をする「オオカミ少年」と断じている。

   だが、新潮も書いているように、専門家でもわからないのだ。

「低線量での影響は専門家間で結着がついていないため、実際の危険性は科学的にはわからないのです」(神戸市立工業高専の一瀬昌嗣準教授)

   たしかに、三橋紀夫東京女子医大放射線腫瘍科教授のいうように、「最近、一部のメディアの報道が、『オール・オア・ナッシング』になっている点に疑問を感じます。要するに、可能性がゼロではない、という事象を全て『害悪』として指摘する。それこそが危険な考え方」なのだろうが、放射線の危険性は限りなくゼロに近いのだろうか。

大新聞・テレビと同じ大本営発表なら週刊誌いらない

   また、文科省が発表しているモニタリングポストの数値への疑問は、福島県民の中に根強くある。福島市は原発事故当初から放射線量が高いことで知られていたが、文科省の発表する数値はギリギリ「年間20ミリシーベルトを超えない値」である。20ミリシーベルトを超えれば30万人以上が避難の対象となる。そうさせないために数字を「操作している」のではないかと、福島市長までもが心配しているのだ。

   5月23日(2011年)に福島の保護者たち約500人が文科省へ行き、「福島の子どもを守れ」「モルモットにするな」などのプラカードを掲げ、年間20ミリシーベルトの放射線量の暫定基準撤回を求めたが、こうした声に政治家や官僚たちは真摯に答えているだろうか。

   文春に浜岡原発で働いていた長男を白血病で失った母親のことが載っている。彼女の長男は、1989年11月に慢性骨髄性白血病と診断され、2年以上も闘病を続けたが亡くなった。彼は浜岡原発で原子炉の計測機器の保守・点検をやっていて、9年間の被曝量は50・93ミリシーベルト、法定基準の年間50ミリシーベルトよりはるかに少なかったのだ。

   だが、「火葬場から出てきた息子の骨を見ると、首のあたりが真っ黒なんですね。もしかしたら、ここにも放射線が当たっていたのかなって」と母親は話し、「東北の子どもたちや従業員の皆さんが、五年後にもし病気になったら、私と同じ思いをする人が出てしまうんです」と続ける。

   このケースでも、被曝から数年経って発病したため労災認定は認められなかった。原発事故が収まり、その数年後に住民ががんなどに罹ったとき、東電や国は因果関係を認めて保障してくれるのだろうか。

   大新聞やテレビと同じ大本営発表で済ますなら、週刊誌の存在理由はない。ポストや新潮編集部はそのところをどう斬り込んでいくのか、注目したい。

   朝日で田原総一朗氏はコラム「ギロン堂」でこう書いている。彼の番組でオサマ・ビンラディンを取り上げようと、9・11貿易センタービルに自爆テロの航空機が突っ込む映像を使いたいとスタッフに頼んだところ、「使えません」と断られたのだそうだ。

   東日本大震災で大津波が人を襲うシーンや、遺体が運ばれている映像などはほとんどテレビに出てこない。衝撃的な映像を見た人、特に事件の関係者や被災者が不安障害、PTSDを起こすことがあるからだという理由だ。

「いまは言論統制などないにもかかわらず、メディアは大本営発表ばかりを報じ続けてきた。コンプライアンスによって、事実の追求ではなく、無難の追求になってしまうのだ」

同感である。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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