2024年 4月 27日 (土)

住み慣れた土地離れて迎える人生の終幕…増え続ける「介護移住」老親も家族も切ない選択

   急速に進む高齢化社会のなかで、大都会の高齢者が地方へと移って介護を受ける「介護移住」が広がり続けている。大都会では高齢者施設の整備が追いつかず、東京では4万人が安い特別養護老人ホーム(特養)の空きを待っていて、遠方の住み慣れない土地でケアを受けざるを得ない現状だという。

   行政のなかには地方に介護施設を作る「遠隔地特養」の動きも出ているが、まだ緒についたばかりで課題も多い。老いて安心して暮らせる終の棲家をどうすれば手に入れることができるのか。

特養入所待ちの高齢者は全国で42万人―高地価の大都市部では困難な増設

   高齢者は75歳を過ぎると体調を崩すことが多くなり医療や介護に頼る。世界に例を見ないスピードで高齢化の波が押し寄せる日本は、2025年までに75歳以上の高齢者が60%以上増える地域として、東京、名古屋、大阪の3大都市があり、埼玉、千葉両県では倍増すると見られている。

   なるべく施設に頼らず、住み慣れた地域で在宅の生活を最後までまっとうできるように介護や医療の支援を充実させていく―これが国の基本方針らしい。都市部高齢者の特徴のひとつは、所得の高い人が少なくない一方で、生活の苦しい低所得層が圧倒的に多いこと。それらの高齢者にとっては国の基本方針など絵に描いた餅だ。

   国の支援で比較的安い料金で利用できる特養の入所待っている高齢者は全国で42万人にのぼるという。とくに3大都市圏では地価が高いことから用地の確保が困難なうえ、財政が苦しいなどの理由で施設の整備率は全国平均を下回っている。

   晩年を住み慣れない遠方の施設でケアを受けながら孤独な生活に耐える高齢者も、時折面会に訪れる家族も切ない思いに耐えているのが現実だ。都心から40キロ離れた茨城県取手市の特養に入所している父親を訪ねて、自宅の川崎市から2時間半かけてやってきた娘は、勤務先から休みをもらい1か月ぶりの面会だった。母親は別の施設に入っている。

   もともとは娘は自宅で認知症の両親の介護をしていた。しかし、夜中の徘徊が激しくなり施設に預けることにしたのだ。当初、安く入居できる特養を探したが、待機者が300人もいてすぐに入居でき状況ではなかった。次に民間の有料老人ホームとサービス付き高齢者住宅を探した。近いところはどこも月々の利用料が2人で30万円以上もかかり断念せざるを得なかった。行き着いた先は2人で20万円以下の取手市の介護施設だった。夫婦はバラバラだが、それもやむを得ない選択だった。

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