2024年 4月 30日 (火)

住み慣れた土地離れて迎える人生の終幕…増え続ける「介護移住」老親も家族も切ない選択

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「遠隔地特養」でリロケーションダメージ…認知症やうつ症状

   そうしてなかで首都圏の自治体の中にはさまざまな悪条件下で新たな施設の整備に取り組む動きも出てきている。東京・杉並区は特養を今年(2013年)新たに70床、来年は161床オープンする予定だ。だが、待機者は1944人もいる。新たに都心に建設するのはもはや限界と考えた末、かつて区の養護学校があった静岡県南伊豆町の跡地に特養を建設することにした。

   行政機関がよその県内に高齢者施設を作るのは全国でも初のケースだが、これには越えねばならない厚い壁もある。現在の制度では、南伊豆町の施設に入居した場合、医療費や介護費用は杉並区が負担するが、生活保護を申請したり、75歳になって後期高齢者医療制度に移行したりすると静岡県や南伊豆町の負担になり、受け入れる自治体の負担が増えてしまう。

   厚労省は今年5月から都市部の高齢者対策について検討を重ね、介護移住の課題についても検討を行なってきた。このほど出された報告書には、県外から高齢者を受け入れる自治体の費用負担については制度改革が必要だと答申された。それでもまだ課題は残る。

   社会保障政策に詳しい中央大学の宮本太郎教授はこう解説する。「社会的階層性というのか、お金がないから地方を選択せざるを得ないとなると、これはまた問題だと思うんです。高齢者が馴染みがない土地に移住すると、リロケーションダメージ(移住することによる精神的悪影響)と言いますが、大きく環境が変わったときに認知症が進行したり、ウツ症状がでてしまうことが危ぶまれるんです。

   それでも、当人の意向というより、家族の状況を考えて空気を読んで『行こう』というかもしれない。さらに、移住先のサービスの質を考えると、極端な話、虐待が起きたり、不正の請求があったときに十分チェックできるのか心配になります」

   国谷裕子キャスター「地方自治体の住民でないゆえに必要なサービスを受けられないケースも出てくるでしょうね」

   宮本教授「認知症のお年寄りの集中介護サービスは移住してきた人は現実には受けられない。施設などの住まいはあるが、行政のトータルのサービスは受けられないという問題に繋がりかねません」

   そこで国や東京都、とくに猪瀬知事にはひと言いいたい。東京五輪招致に成功し、おもてなしの心で巨大な箱物をつくるのに狂奔するのも結構だが、慣れない土地で家族と離れ孤独に耐える高齢者、仕事の都合でたまにしか面会にいけない切ない家族が急増していることにも気配りを忘れないで欲しい。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2013年9月25日放送「安住の地はどこに~広がり続ける『介護移住』~」)

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