2024年 4月 29日 (月)

東電―KDDI連合が招く NTT“独り勝ち"のジレンマ

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  東京電力KDDIの通信事業における資本・業務提携が波紋を広げている。携帯電話事業がない東電と、自前の光ファイバー網をもたないKDDIは、相互に弱点を補完し合ってNTTへの対抗姿勢を強めていく構えだ。しかし、この提携劇、ブロードバンド通信におけるNTTの“独り勝ち"を逆に助長しかねないジレンマを抱えている。

  KDDIは11月、東電の通信子会社であるパワードコムの吸収合併に正式契約、東電は保有するパワードコム株とKDDI株を株式交換することにより、出資比率4・81%と京セラトヨタ自動車に次ぐKDDIの大株主になった。これを受け、KDDIは東電の10 万㌔㍍に及ぶ光ファイバー網を優先的に使用する権利を得て、FTTH(光ファイバー通信) サービスの基盤を整える。

日本の通信市場は3大勢力に収斂される

  KDDIは携帯電話事業こそ絶好調なものの、 NTTへ市内回線の接続料を支払って展開している固定通信事業は赤字だ。東電も成長分野の携帯電話がない通信子会社は苦戦しており、それを売却し、FTTHサービスの卸売りに徹することで出直しを図る。
この結果、わが国の通信市場はNTT、K DDI-東電、ソフトバンク-日本テレコムの3大勢力に収斂される見通しだ。しかし、総務省の幹部は指摘する。
  「東電-KDDI連合の実現を最も望んでいたのは、ほかならぬNTTだった」 というのも、この提携劇は、NTTの悲願である光ファイバー網の開放義務撤廃の有力な根拠になるからだ。「電気通信事業法」は市内回線を事実上独占するNTT東西に対し、回線開放を義務付けているが、NTTの和田紀夫社長は「メタル回線と違い、光回線は当社もこれから本格的に敷設する設備であり、競争上のボトルネック性はない」とし、規制緩和を主張している。 そこへ有力な光ファイバー網をもつ東電と KDDIの提携が実現すれば、FTTHサービスにおけるNTT1強体制は相対化され、その悲願成就に恰好の口実を与えてしまう。

東電の単独行動に不満強まる

  現在、認可されているNTT光ファイバー網の接続料金は1芯当たり月額5304円。開放義務が撤廃されれば、NTTがそれを引き上げるのは必至であり、その時、KDDI はじめ通信各社はFTTHサービスから駆逐され、NTTはブロードバンド通信の覇者に躍り出る。東電―KDDI連合の効果は関東圏に限られるのだ。
  一方、東電以外の電力9社は従来、10社連携して通信事業を展開してきた経緯から、東電の単独行動に不満を強めている。KDDI は関西電力にも資本・業務提携を打診しているが、関電は通信子会社を売却する気はない。
  その間隙をつき、ソフトバンクが関電や九州電力に接近しているという情報もあり、電力10社の通信事業は東西分裂の可能性も高まっている。

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