2024年 5月 3日 (金)

誤発注404億賠償 弁済拒否の裏側

   みずほ証券が2005年12月にジェイコム株の誤発注で被った損失額407億円のうち、東京証券取引所に404億円の損害賠償を求めた問題は、東証が弁済を拒否し、法廷闘争にもちこまれる見通しになった。ただ、こうなるのは関係者の間では既定路線。前例のない誤発注、しかも巨額の損失が出た事案だけに、なあなあの密室談合で解決するわけにはいかず、司法判断を仰ぐ以外に客観的な解決方法がないというわけだ。東証は司法判断しだいでは、売買システムを開発した富士通にも負担してもらい、応分の支払いに応じる方針だ。

「裁判で負ければ支払いに応じる」

誤発注問題は法廷闘争に拡大?
誤発注問題は法廷闘争に拡大?

   東証の西室泰三社長は記者会見で「東証が多額の弁済をする必要はない」と表明した。裏を返せば、東京地裁に過失責任を特定されれば、支払いに応じる姿勢を示したともいえる。東証が和解勧告などに応じた場合、賠償金の支払いをめぐり、問題のシステムを開発した富士通に損害賠償を請求するとみられ、誤発注問題は東証と富士通の法廷闘争に拡大する可能性がある。
   ジェイコム株の誤発注は、みずほ証券が誤りに気付いた後、注文の取り消しを東証のシステムに出したが、システムに拒絶されたため、5億円前後とみられた損失額が407億円に膨らんだとされる。当時の東証のシステムは、「注文に応じていったん約定した株取引を、直後に取り消すことなどあり得ない」(東証幹部)ため、証券会社が誤発注に気付いて取り消しの指示を出しても、受け付けられない仕組みだった。
   東証はトラブルの責任を取って当時の鶴島琢夫社長が辞任したが、「それは市場を混乱させた社会的責任をとったのであって、システムの欠陥を認めたわけではない」(同)というのが、表向きの言い分だ。西室社長が、陳謝しながらも「損害賠償金を支払う必要はない」と主張する理由はここにある。

矛先を早くも富士通に向ける

   一方のみずほ証券は、自らの誤発注の過失を認めながらも、損失額の拡大は東証のシステムに欠陥があったからだと主張して譲らない。実際に、トラブル直後に東証がシステムを改善したことを指摘し、当初の欠陥を東証が認めたことになると主張する。
   法廷闘争に持ち込まれた場合、過失責任と損害賠償額の算定が焦点になるが、東証の06年6月末時点の剰余金は443億円。このほか、東証は証券会社が決算できなくなった場合に備えた積立金が173億円あり、仮に全額の支払いを命じられた場合でも対応は可能とみられるが、次期システム導入で06年度から3カ年で620億円を投じる東証の財務に影響するのは避けられない。賠償が命じられた場合、西室社長は「当然、富士通にも補償の話をしなければいけない」と漏らすなど、矛先を早くも富士通に向けつつある。

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