2024年 4月 19日 (金)

07年に評価されるSNS 非日常性と「穏やかさ」
-野村総合研究所 山崎秀夫氏インタビューVol.2-

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   2006年はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が流行った年でもあった。日本では最大の「ミクシィ」に加え、06年11月にはソフトバンクが世界最大のSNS「MySpace(マイスペース)」の日本語版サービスを開始した。こうしたなかで、日本のSNSはどうなっていくのか。前回に引き続き、野村総合研究所の山崎秀夫さんに、J-CASTニュースが聞いた。

――2007年、あるいは数年後、SNSの先行きを占うポイントを教えてください。

07年のSNSについて語る野村総研の山崎秀夫さん
07年のSNSについて語る野村総研の山崎秀夫さん
山崎 2007年は非日常性、「仮想の世界」が再評価されるんじゃないかと思っています。米国のバーチャルコミュニティ「セカンド・ライフ(Second life)」なんかは典型的で、要するに「アバター」というネット上の仮想世界の化身となって、自分たちの仮想の街、仮想の家を建てる。そこで社交をするというようなことをします。この「仮想世界」の流れが、日本に来るんだろうと思っています。日本ではティーンが参加するチャンスはなかったんですが、最近、携帯電話にゲーム的要素を取り入れたSNS「モバゲータウン」が出てきました。これも、「セカンドライフ」的な流れに沿っていますね。富裕層向けSNS「Nileport」も非日常性を取り入れている。非日常性を取り入れたSNSは、人間関係をスムーズにして行くという面があります。それがポイントです。

――では、最近日本に上陸した「MySPACE」は成功するのでしょうか。

山崎 「MySpace」は、日本のミクシィグリーに比べ、「毛づくろい」の仕方がちょっと違うんですよ。日本のミクシィなどは、各参加者が書く日記、簡易ブログの上で毛づくろいしてコミュニティができているが、「MySpace」はプロフィールの上で毛づくろいをしている。そこが違います。文化的に日本に合うのかという点があるのは事実です。しかし、プロフィールのカスタム化・動画・音楽だとか、マルチメディアの感性に訴える要素は圧倒的に上です。成功するとすれば、孫さん(ソフトバンク)がどこまで本気になるか、つまり「携帯電話戦争」にどこまで巻き込めるか、ということでしょうね。孫さんが「MySpace」と組んだ理由は、ナンバーポータビリティ(番号持ち運び制)がらみで、「MySpace」の要素を全部ケータイにつないでいくつもりなのでしょう。最近ではケータイ電話戦争がSNS戦争に近い状況になってきて、ドコモが楽天の「らくトモ」をやり、KDDIが「EZGREE」、そして孫さんのソフトバンクが、「Yahoo!Days」「MySpace」というように今ではなっている。そこで、通信料ではなく、広告費など他の収益で稼ぐために滞在時間をどれだけ長くするかが重要になって来るだろうと予想しています。

企業内SNSに注目が集まる

――とすると、携帯電話のSNSもトレンドになると。

山崎 そうですね。携帯電話の場合は自由登録制で、先ほど申し上げた「仮想」の要素も強いのが大きいです。さらにティーンが入ってくるということがあります。年齢層も違う、見せ方も違うということで、ケータイ電話にどれだけ滞留させることができるか、これから携帯各社の「滞留戦争」の核の一つになるのではないかと予想しています。 もう一つ注目されるのが企業内SNSだと思います。日本興亜損保NTT東日本NTTデータなどがすでに始めていますが、今後も本格的な動きがあるでしょうね。

――なぜ、企業内SNSに注目なさるのですか。

山崎 現在の企業は、効率化には成功している。最近はちょっとだけゆとりが出てきました。だから、安定成長論が注目され、人間を中心にした人間関係論であるとか、「感情の共有」が重要な要素になっていきます。そういう点からすると、日本興亜損保のOB・OG向けSNSというのがとても面白くて、結局企業側がそこでほしいのは女性社員の産休・育休のためのアルバイトなんですね。リクナビでこういうのを募集してもなかなか集まらないのは目に見えています。そこで、同窓会のための設備を提供して、そこで遊んでもらって、「ちょっと困っている」といってアルバイトを募集するんです。 ここはSNSあるいはブログでポイントになる、「倫理観があり、否定型でなく肯定性」という性格を非常によく利用しています。

――倫理観や肯定性がSNSでは重要なキーワードになるのですか

山崎 SNSは各「群れ」のなかでは極めて穏やかな環境が維持されているというのが特徴です。穏やかな規範が出てきていて、お互いを肯定する、社会学的に言う「セルフヘルプグループ」みたいなものが成立していますから、そこから「オフ会」へという流れになりうる。ブログも全体的にそうですよね。穏やかな社交ができる環境があるからこそ、そのなかでのコラボーレーション、ビジネスが生まれて来る。ネット上で社交や共同作業の手段ができ、それを認めるような環境、創発揮規範ができてきている、ここがSNSについて考えるときにとっても重要ですね。

【山崎秀夫(やまざきひでお)プロフィール】
野村総合研究所社会ITマネジメントコンサルテイング部上席研究員。1986年野村総合研究所入社。ナレッジマネジメント、ネットコミュニティ論、ソーシャルネットワーキング研究などが専門。著書に「ソーシャル・ネットワーク・マーケティング 21世紀型―『コミュニティ・マーケティング』と『顧客クラブ』」(ソフトバンク出版)「SNSマーケティング入門 上客を育てる23の方法」(インプレスR&D)など

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