買い付け価格は公募増資の発行価格の3分の2
一方、日産ディにとっても、ボルボから財務の全面サポートを得る利点は大きい。仲村巖社長が就任した02年以降、有利子負債削減に取り組み、財務体質の改善を進めてきた。しかし「短期のリターン(回収)が見込める投資しかできなかった」(仲村社長)といい、今後の技術競争強化や海外販売網の開拓 ではボルボとの一体化が得策と判断した。
ボルボのTOBが成立すれば上場廃止となるが、仲村社長は「今の最大の望みは成長すること。効率的にやるには子会社化が最適の形だ」と、非公開化による経営の安定性を優先させる考えを示した。
ボルボとの協議の結果、日産ディの経営体制は現在のまま維持し、ボルボグループのほかの欧米トラックメーカーと対等の位置づけにすることなどを認めさせたという。社名も「顧客に浸透している」とし、日産ディーゼル工業のまま変更しないとい、経営陣には悪くない話だ。
だが、投資家の間から不満の声が上がる。ボルボが発表した日産ディ株式の買い付け価格540円は、05年12月に日産ディが実施した公募増資の発行価格824円の3分の2。ボルボは現在の市場価格に3割のプレミアムを上乗せしているとはいえ、前回の公募増資に応じた投資家は、経営陣のように喜んでいられない。仲村社長は会見で「公募増資後、株価が低迷しているのは残念。ぜひともご理解頂きたい」と話すにとどまった。