2024年 4月 28日 (日)

枝川二郎のマネーの虎
銀行よ、リスクが高い株式保有をやめよ!

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   経済が下降局面になると必ず叩かれるのが銀行だ。それはそうだろう。銀行マンは景気が良いときは高給を取り、経営が立ち行かなくなると公的資金(税金)を入れてもらう。つまり、「儲けは自分のもの、損は皆さん(国)のもの」という構図だ。資本主義と社会主義の「いいとこ取り」とも言えるこのような状況は打破していかねばならない。

株式保有は預金者にメリットがない

   銀行の「本業」は、個人から預金を集め、中小企業などへ貸し出すところにある。このような公共性の高い業務についての公的資金の投入は、とりあえずOKとしておこう。しかし、それ以外の業務、たとえば証券業務や資産運用業務、不動産業務にまで税金を使うとなると「ちょっと待ってくれ」と言いたくなる。

   特に問題なのが株式投資である。株式保有は価格変動率(リスク)が高く、このところの株価の下落によって銀行は巨額の損失を計上した。政府は昨今の株安を契機として自己資本比率規制の緩和や公的資金の資本注入の計画を進めているらしいが、株式投資という銀行の本業以外の、高いリスクがある事業のために預金者を危険にさらす状況はおかしい。 まして、税金の投入などという話になるのは理解に苦しむ。もちろん、株価あるいは配当が上がる可能性もあるが、決まった金利を受け取るだけの預金者にはまったくといってメリットがない。

   そもそも、わが国の株式持ち合いという慣行が問題だ。戦後、企業グループの関係維持のためにはじまった株式の持ち合いだが、銀行は債権者(貸し手)かつ株主という二重の立場から企業を圧倒的な力で支配することとなった。つまり、銀行のさじ加減で企業の存続が実質的に決まってしまうのだ。

提言 銀行の株式投資を「ファンド」に移せ

   とはいえ、銀行にとって株式の持ち合い関係がそんなに良いものとも思えない。銀行と企業は永続的な関係を結ぶこととされるため、銀行は重要取引先の株式はずっと持ち続け、株価が高くなったときもそれを売却することは許されない。しかし、企業にも寿命がある。企業と一蓮托生の関係を持続していたら、融資はいずれ不良債権になるだろうし、株価も最後はゼロ(配当益以外は得られない)ということになる。

   ゆえに、われわれの預金が「半永久的にホールドされる株式ポートフォリオ」を保有するのに流用されている現状は早急に変える必要がある。

   ただ、現実には銀行が巨大な株式ポートフォリオをすぐに売却するというのは、そう簡単にはいかないだろう。そこで、現在保有している株式ポートフォリオをそっくりそのまま、新たな株式投資ファンドとして銀行とはまったく別の会社に移行するというのはどうだろう。

   そうすれば、元本保証されている預金者のカネをハイリスク投資にまわしている現状が大きく変わる。また運用側にしてみると株式の自由な売買を通じて利益の最大化を追求することが可能になる。

   国民が銀行に公的資金を投入するのを許容するのは、ひとえに預金者の保護と中小企業の資金調達という大義名分があるからだ。それ以外のリスクの高い事業を行っている部分に、われわれの税金を使うことは許すべきでない。


++ 枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして勤務。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。


姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中