2024年 4月 28日 (日)

若者2人に1人「花粉症」予備軍 根本的治療法はあるのか

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   スギ花粉などの花粉によって生じるアレルギー疾患「花粉症」に、4人に1人がかかり、若者は2人に1人が予備軍だと言われている。発症すれば、くしゃみが出て、目がかゆくなるといった症状を引き起こす。日常生活もままならない人も少なくない。症状を薬で緩和する治療法と、花粉エキスを注射で体内に取り込み花粉症を根本から治療する方法の2つがあるが、だれでも完治する方法は確立されておらず、新しい治療法に期待が高まっている。

放っておいたら悪化する一方

   花粉症は花粉によって生じるアレルギー疾患の総称で、体の免疫反応が花粉に過剰に反応して、くしゃみが出る、目がかゆくなるなどの症状が出る。さらに、鼻づまりによる頭痛、鼻や喉の炎症反応による微熱、だるさなどの症状を引き起こす。10年前には国民の15~16%程度だったが、いまや、25~26%が花粉症にかかっているとも言われ、毎年、花粉症に苦しんでいる人も多い。

   花粉が少ない年には症状が出ないこともあり、治ったと勘違いする人もいるが、自然治癒するのは数%で、ほとんどの人は治らない。放っておいたら悪化する一方なので、早めの治療が必要だ。主に2つの治療法がある。

   1つ目は、点眼薬、点鼻薬、内服液を使う「対症療法」。症状をやわらげることを目的とする。(1)花粉症のときに体内で増えるアレルギーの細胞を抑える(2)アレルギーの細胞から症状の原因となる物質(化学伝達物質)が放出されるのを制限する(3)ヒスタミンをはじめとする化学伝達物質が神経や血管に作用するのをブロックする。厚生労働省の調べでは、薬剤をうまく使い分ければ約5~6割の患者が快適に過ごせることがわかっている。

   もう1つは、花粉症を根本から治療する「根治療」。濃度を下げて薄くした花粉の抽出液を注射し、その後少しずつ濃度を上げていくことで免疫をつけていく「減感作療法」が代表的だ。花粉症の季節の3か月以上前から始め、2年以上続ける必要がある。はじめの3か月間は週に1回、次の2か月が2週間に1回、その後は1か月に1回注射する。注射した抗原がリンパ球を刺激するため、鼻の粘膜にあるアレルギーの細胞が減少することが報告されている。

   厚生労働省が行った研究結果によると、スギ花粉症に対する減感作療法で軽症、無症状に収まった患者は70%以上にのぼった。そのうち28%が薬を使わなくて済んだ。また、15歳以下の小児の方がより高い効果が表れることもわかった。調査はもっとも花粉が飛散した05年度に実施した。

   日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科の大久保公裕准教授は、

「減感作療法の効果は人によって異なります。症状が悪化している人や、小児がよく効きます。2~3年以上やれば完治する人もいますが、そうでない人もいます」

といい、個人差があるようだ。

減感作療法は、はじめの3か月毎週注射を打つ

   注射による減感作療法は保険が適用され、費用は初めての年は1万2000円~1万7000円程度、翌年からは7000~12000円程度かかる。

   一方、山形大学医学部耳鼻咽喉科の太田伸男先生は、

「減感作療法は、花粉エキスを摂取した期間、つまり治療した期間、効果が続くと言われています。例えば、2年摂取し続ければ、その後2年効きます。しかし問題は、はじめの3か月は毎週注射を打たなければならないということです。さらに、エキスの濃度を濃くしていくと、気分が悪くなる、血圧が低下する、冷や汗がでるといった『ショック症状』が出る人もいます」

と指摘する。

   注射が嫌い、頻繁に病院に通えないという人に好評なのが、「舌下免疫療法」だ。

   舌の下にスギ花粉を含むエキスを滴下する。流れてしまわないように舌下に置いたパンくずの上にエキスを滴下して行なう。このパンくずを2分間舌下に置いたままにし、その後吐き出す。これを最初の4週間は毎日1回行う。その後は花粉飛散期終了まで週1回、花粉飛散後は月2回やる。月に1回程度通院し、滴下は家で行う。

   三重大学医学部附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科で、スギ花粉に効く舌下法を実施している。

   担当医師の湯田厚司先生は、

「注射が嫌いという人や、自宅でできるという点がうけて、利用する患者さんはすごく増えています。完治したという人は1~2割程度で、注射に比べて低いですが、薬に比べたらよく効いているという患者さんが多いです」

という。

舌下法は保険が効かないので年間5~6万円かかる

   ところが、舌下法は厚生労働省の認可が下りていなく、実施している病院が少ない。さらに保険が効かないので年間5~6万円かかるという問題もある。

   他にもアレルギー成分を取り除いた花粉エキスを用いる「ペプチド免疫療法」や細菌のDNAと抗原がくっついた「DNAワクチン療法」、他の物質を結合させた修飾抗原による「免疫療法」などが試験段階で、実用化への期待が高まっている。

   前出の山形大の太田先生は、こう訴える。

「若い人の2人に1人が花粉症予備軍だと言われ、患者数は増える一方ですので、早くに安全な治療法が確立されて、大学病院以外でもどこでも治療ができるようにする必要があります」

   もっと手軽に減感作治療ができないか、と、こんな試みも進んでいる。農林水産省が補助金を出し、農業生物資源研究所(茨城県つくば市)と日本製紙は、「スギ花粉症緩和米」を06年から開発している。

   遺伝子組換え技術を利用し、アレルギーの原因となるスギ花粉に含まれる抗原決定基(エピトープ)を米の中に組み込んだ。この米を食べることで、徐々に体に花粉が入ってきたと錯覚させ、症状の緩和につながる。

   機能性食品として発売する予定だったが、厚生労働省から医薬品にあたると指摘を受け、「実用化の目途は立っていない」(日本製紙)。食べられるのはだいぶ先になりそうだ。

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