2024年 4月 19日 (金)

「おかき」と「コーヒー」タダ 「0円カフェ」成立する秘密

   東京・虎ノ門におかきとコーヒーなどの飲み物を無料で提供する「フリーカフェ」が登場した。この不況下に「0円」でティータイムを過ごせるというだけあって、連日、近くに勤める会社員で賑わっている。フリーカフェなるビジネスはどう成り立っているのか。

サラリーマン憩いの場?全114席が満席

おかきとドリンクが0円
おかきとドリンクが0円

   おかきと飲み物が全部タダ、と人気を呼んでいるのは、「フリーカフェ播磨屋ステーション東京霞が関」(東京・虎ノ門)だ。8種類のおかきを、コーヒーやほうじ茶を飲みながら、座って試食できる。1人でも多くの人に食べてもらいたいという店の意向で、おかきは1人1皿までと決まっている。

   おかきを販売していた店を改装して、2009年5月にオープンした。運営している播磨屋本店(兵庫県豊岡市)によると、平日は会社員や近くの虎の門病院の利用者の憩いの場となり、午後には全114席が満席に。1日の利用者は1000人にものぼる。

   播磨屋本店は1860年頃に創業した老舗の米菓製造販売業で、全国に直営店を12店展開する。年商は70億円ほどで、「常連さんにご愛用いただいているので、直営店を増やさなくても(経営は)安定している」と同社はいう。

   フリーカフェを出店した理由については、こう説明する。

「今まで買っていただいたお客さまへのご恩返し、というのが第一にあります。店では商品の販売もしていますので、買っていただければなおありがたいですが。また、若い方もいらっしゃるので、当社の環境問題への取り組みについて知ってもらいたいという社長の願いもあります」

   霞が関店に訪れる客のおよそ6割が、「食べてみたら、おいしかった」「タダで申し訳ないから・・・」などの理由で商品を買っていくというが、それだけでは店舗運営にかかるコストのもとを取れないだろう。同社の担当者も、「売上げが大きく下がるほどではないが、経費はかかる」と話している。

   フリーカフェ・ビジネスは、どのように成り立っているのだろうか。

メディアがこぞって取り上げ、広告効果は「大」

   この不況下で「タダ」で飲み食いできるカフェとしてテレビや新聞がこぞって取り上げ、店には「一見さん」(初めてのお客)も多く訪れる。テレビで見て興味を持ち、本社への問い合わせも増えている。

   また、通販もできる公式ホームページで、初めてのお客に限り全9種のおかきが入った「無料のお試しセット」を注文できる。通常1日の注文量が200~300セットのところ、メディアでフリーカフェが紹介されると翌日に3~5倍にはねあがる。

   企業のブランディングや販促に詳しい日本ブランド戦略研究所の榛沢明浩代表は、こうみている。

「フリーカフェ単体では何の収益にもなりません。でも、試供品の一種として考えると、いろんなところで話題になっているので宣伝効果が大きいと言えるでしょう」

   さらに榛沢氏は、おかきを百貨店の一角や街頭で配るほうが、人件費や場所代で意外とコストがかかると指摘する。一方、セルフ式の無料カフェなら接客しなくていいので、そんなに人を増やす必要はない。コーヒーなどの無料の飲み物は、作り置きしておけばいい。テーブルや椅子、食器などの備品も立派なものでなくても、タダなら誰も文句は言わないはず。

「お菓子や化粧品などのサンプルだけを集めた専門店はありますが、フリーカフェのような試みは他にないと思います。企業のキャンペーンとしてみても、おもしろいですね」

   播磨屋本店は、霞が関店に続いて2009年内に東京・銀座と大阪・御堂筋にもフリーカフェをオープンする。

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