2024年 4月 19日 (金)

静岡空港早くも「前途多難」 利用低調で減便の「危機」

   「最後の地方空港」とも言われる静岡空港(静岡県牧之原市、島田市)が開港して2か月だが、早速「前途多難」に見舞われている様子だ。日本航空(JAL)の福岡便について、一定の搭乗率に達しなかった場合は県がJALに支援金を支払うという制度に対し、川勝平太知事は見直しを主張している。ただ、「1日3便」という便数を搭乗率保証で確保したという経緯があるだけに、見直しを声高に叫べば、今度は減便の可能性が現実味を帯びてくる。

JALの福岡便のみに搭乗率保証制度

静岡-福岡便の減便はあるのか
静岡-福岡便の減便はあるのか

   搭乗率保証制度は、平均搭乗率が70%を下回った場合、県がJALに対して1席あたり1万5800円を支払うというもの。静岡空港は、国内線は3社が乗り入れており、JALが札幌便と福岡便、全日空(ANA)が札幌便と沖縄便、地元資本の「フジドリームエアラインズ」(FDA)が小松便、熊本便、鹿児島便を飛ばしている。ところが、この搭乗率保証制度、どういう訳かJALの福岡便のみに設定されているのだ。当然、ANAは「不公平」と反発。制度は2009年度当初予算案の一部として盛り込まれたものだが、県議からも「70%の設定は高すぎる」といった声が噴出した。

   静岡空港以外で唯一搭乗率保証があるのが、ANAの能登空港(石川県)-羽田線だ。03年の能登空港時に搭乗率を70%に設定し、当初は1往復だったものが2往復運航されることになったという経緯がある。ただ、能登空港が静岡と違うのは、目標搭乗率を上回った場合は、航空会社から返金があるという点だ。もっとも羽田-能登線は地元の努力もあって予想外に好調で、実際、開港1年目は、約1億円がANAから県に返金されている。

   これに対して、静岡県側は「福岡便には新幹線との競合というリスクがある」なとど説明。さらに「70%は達成できる。保証は、まさかの時の下支え」と、制度はあくまでも「保険」だとの見方を示してきた。

   ところが、実際に静岡空港が09年6月4日に開港してみると、この前提が覆ったことが明らかになった。静岡県が発表した6、7月累計の搭乗率は、札幌線が81.8%、沖縄線が83.1%と好調な一方、福岡線は61.4%。制度の発動が濃厚なのだ。仮に搭乗率60%で推移した場合、1年間で3億6000万円をJALに支払う計算になる。

JALの西松遥社長とのトップ会談求める

   ところが、ここに来て、制度見直しをめぐる動きが本格化しつつある。前知事の辞職を受け、搭乗率保証の見直しを掲げて当選した川勝平太知事は、7月21日の定例会見で

「(JALと静岡県が)本来対等の関係であるべきところに、やや相手に譲歩するような姿勢が生まれた時があったように思う」

と延べ、8月10日の会見では、

「意思決定(権)のない部局でお目にかかってもさして解決への道が遠い」

として、JALの西松遥社長とのトップ会談を求めていることを明らかにした。さらに、記者から「話が平行線になって、トップ会談が実現しなかったらどうするか」と聞かれても、

「いや、必ず実現します。地の果てまで追い掛けます」

と、並々ならぬ意欲を示した。

   世論の反発も根強い。中日新聞が8月6日から8日にかけて、県内の4000人以上を対象に意識調査を行ったところ、搭乗率保証について91.8%が「反対」や「見直すべきだ」と回答。県内では、搭乗率保証制度に対する支持は、ほとんど得られていないというのが現状だ。

   もっとも、制度をめぐっては、石川前知事が09年2月27日の会見で、「保証がなければ1日3便を確保できなかったかも知れない」といった趣旨の発言をしている。言わば、「便数を税金で買っている」とも言える形で、保証制度がなくなればJALが減便に踏み切る可能性もある。

   さらに、09年3月に県議会で予算が通過した時に「保証が多額になりそうな時は、速やかに減便などの対応を求める」という趣旨の付帯決議が盛り込まれたという経緯もある。予算案に付帯決議が付くのは静岡県政史上初めてで、法的拘束力はないものの、県側がこれを無視するのは困難だとみられる。そうなると、仮に現在の水準の搭乗率が続けば、保証金制度自体が存続したとしても、減便に追い込まれるのは必至だ。

   JALの福岡路線以外でも、7月23日に就航したばかりのFDAも、目標とする搭乗率65%を大きく下回っている(鹿児島線58%、小松線47.4%、熊本線39.7%)。石川前知事の肝いりで1900億円をかけてオープンした静岡空港だが、川勝知事は大きな重荷を背負わされたのは間違いなさそうだ。

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