「夜明けのスキャット」の由紀さおりアルバム 米、カナダで次々1位と世界的ヒットの快挙 

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   歌手の由紀さおりさん(62)がアメリカの人気ジャズ・オーケストラ「ピンク・マルティーニ」と組んだアルバムが、世界22か国で順次売り出され、人気を集めている。デビュー当時の日本の歌謡曲を日本語で歌っているのに、アメリカやカナダのチャートでも1位になったのだ。

「ルルルルル~ラララララ~」

   オリコン年間ヒット・チャートで1位に輝いた「夜明けのスキャット」で由紀さおりさんがデビューしたのが1969年。今回出したアルバム「1969」は、この曲のほか、当時の日本や世界でヒットしたポップスをカバーしてある。

「第二の坂本九になれるか」

右はローダーデールさん(英ロイヤル・アルバート・ホール前で)
右はローダーデールさん(英ロイヤル・アルバート・ホール前で)

   全12曲のうち、フランス語で歌った「さらば夏の日」以外は、すべて日本語だ。いしだあゆみさんのヒット曲「ブルー・ライト・ヨコハマ」など、懐かしい曲が並ぶ。それが、2011年10月10日にイギリスを手始めにアルバムが順次売り出されると、各国でチャートの上位に食い込んでいる。

   アメリカでは、iTunesで配信され、その11月2日付ジャズ・チャートで1位に。また、カナダのiTunesワールドミュージック・チャートでも1位に入った。さらに、ギリシャのIFPI総合アルバム・チャートでは4位に、シンガポールのHMVインターナショナル・チャートでは18位になったことが分かっている。

   日本の歌謡曲やポップスで、世界的にヒットしたケースとしては、故・坂本九さんが歌った「SUKIYAKI」(「上を向いて歩こう」)が有名だ。この曲は、1963年に米ビルボード誌の週間ランキング1位を獲得している。

   由紀さおりさんのアルバムの世界的ヒットが報じられると、ツイッターなどでその快挙を讃える声が相次いだ。「なんか凄いことになってるんだな」「第二の坂本九になれるか」「由紀さおりかっけーーーww」…。音楽評論家の湯川れい子さんは、「これ、快挙です。もっと日本のマスコミは報道して下さい!!」とツイートしていた。

   さおりさんが、ピンク・マルティーニのメンバーと出会ったのは、ひょんなきっかけだった。

米ジャズリーダーが透明感ある歌声に魅了される

   ピンク・マルティーニのリーダーでピアニストのトーマス・M・ローダーデールさん(40)が、米オレゴン州ポートランドの地元中古レコード店で、たまたま「夜明けのスキャット」に目が留まり、由紀さおりさんの透明感ある歌声に魅了された。そして、2007年のサードアルバムで、さおりさんの曲「タ・ヤ・タン」を日本語でカバーし、09年にさおりさんのスタッフがユーチューブに投稿されたそのライブを見てコンタクトが始まった。

   10年3月にマルティーニの来日公演で初共演を実現。そして、11年10月17日に英ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われたマルティーニのコンサートにさおりさんが招かれ、そこで披露した歌声が観客総立ちで絶賛されたのだ。12月には、全米公演も予定されており、その行方が注目されている。

   今回のアルバムは、さおりさんが1969年の日本のヒット曲集のアレンジを依頼したところ、ローダーデールさんらが世界のヒット曲も含めるよう提案して実現した。

   日本でも、11年10月12日に発売され、販売元のEMIミュージック・ジャパンでは、「ツイッターで何千以上の反響があり、アマゾンでもいい感じで売れています」(宣伝担当者)と話す。「さおりさんは、アニメやファッションに比べ日本の音楽だけ海外で市民権がないので、一石を投じたいと話されていました。日本では、高音ソプラノのイメージでしたが、今まで使っていなかった低域もカバーしており、それが魅力を増したのだと思います」

   由紀さおり・安田祥子こどもの歌を考える会ソレアード事務局長の谷澤正己さん(66)は、アルバムのヒットについてこう語る。

「世界的な経済危機などで世の中が慌ただしくなる中で、癒し系の音楽が脚光を集めています。最近はリズム中心の日本の歌が多いようですが、60年代のゆったりしたメロディーがこの時代に受けたのでは。ピンク・マルティーニの音楽もゆったりしていますので、息が合っていると思います。そういえば、『SUKIYAKI』も癒し系で、大震災後にまた歌われていますよね。さおりさんの曲も同じようにヒットするかは何とも言えませんが、日本のポップスのよさをぜひ海外に広めてほしいですね」
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