2024年 4月 19日 (金)

原発の罪深さ ボランティア女子大生の目から涙がこぼれ落ちた【岩手・花巻】

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泉田さん(左)の体験談に聞き入る学生たち=花巻市内の「ゆいっこ花巻」の事務所で
泉田さん(左)の体験談に聞き入る学生たち=花巻市内の「ゆいっこ花巻」の事務所で

(ゆいっこ花巻;増子義久)

   「愛犬のコロがね、飼い主の顔を忘れたみたいに近づいてこないの。あの時はショックだった」―。福島県南相馬市出身で現在、花巻市内に避難している泉田ユキイさん(68)がコロを迎えに行った時の話をした途端、3人の学生の目から涙がこぼれ落ちた。沿岸被災地のボランティア活動を続けている筑紫女学園大学(福岡県太宰府市)の学生18人は2日目の20日、花巻市内の8家族の過酷な体験談に耳を傾けた。


   泉田さんの体験談を聞いたのは佐賀県出身の4年生、中村希望さん(22)と渡辺みよ子さん(22)、それに長崎県出身の1年生、浜本愛子さん(19)の3人。佐賀県では九州電力玄海原発の再稼働問題が取り沙汰されており、長崎県は先の大戦で原爆の惨禍に見舞われた。3人とも「核」から目を背けることができない環境に生きてきた。


   「東電に人の心があるかって、その気持ちは変わらない。でもね、置き去りにされた動物たちのことを考えた時、自分も含めた人間の残酷さみたいなものも感じて…」。泉田さんは昨年3月23日、娘さんの嫁ぎ先である花巻に避難。住んでいた小高区が20キロ圏内の警戒区域に指定される前日の4月21日、コロのことが心配になって連れに戻った。「白骨化した牛の死骸、骨と皮になってヨロヨロとさ迷う牛の群れ、餓死した犬や猫…。置き去りにされた犬同士が産み落とした子犬は人間という存在さえ知らないらしいの」


   泉田さんの話に3人は一瞬言葉を飲み込み、そして呻くようにつぶやいた。「原発事故って、こんなにも罪深いものだとは思ってもいなかった。人間って一体何だろうか。そんな深いことを考えさせられた」。泉田さんが言葉を継いだ。「東京の電力をどうして福島で作っているのか、そのことも考えてね。その根底には貧困という問題も隠されているのよ」


   「地元の発展を考えれば、玄海でも原発は必要かもしれない。今まではそう考えていた。でも、自分の考えがいかに薄っぺらなものだったのかを思い知らされた」。中村さんはこう言って泣きじゃくった。「ごめんね。辛い思いをさせて」と泉田さんがその背中をさすった。3人は泉田さんの住所をノートに書き写した。「玄海原発の今後の動きを連絡します。この問題はみんなが一緒になって考えなければならない。そのことを泉田さんに教えていただきました」。3人は今後の手紙のやり取りを約束した。学生たちは21日、沿岸被災地の瓦礫(がれき)撤去のボランティアに向かう。



ゆいっこ
ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
ゆいっこは、「花巻」「盛岡」「北上」「横浜」「大槌」の各拠点が独立した団体として運営しておりますが、各拠点の連携はネットワークとして活用しております。
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