消費増税をめぐる民主、自民、公明3党による修正協議が続く中、野田佳彦首相の「国民のために決断しなければいけない」などと解散を示唆する発言が永田町に波紋を広げている。総選挙に突入した場合、民主党が壊滅的な打撃を受けるのは確実なことから、実際に解散に踏み切る可能性は低いと見られているものの、「ひょっとしたら、ひょっとするかも」との見方もある。自公は6月15日で修正協議打ち切る考え野田首相が解散に含みを残した発言を繰り返している修正協議をめぐっては、野田首相が政府・民主三役会議で自民党案を修正した上で受け入れるように指示しており、事実上自民党案の「丸のみ」を迫られている形だ。自民・公明の両党は2012年6月15日までに合意できなければ協議を打ち切る考えで、タイムリミットは迫っている。このような予断を許さない状況の中、にわかに解散風が吹き始めたとの見方も出てきた。6月11日の衆院の社会保障と税の一体改革に関する特別委員会で、自民党の額賀福志郎元財務相が、関連法案が今国会で成立しなかった場合の対応について、「信を問うくらいの覚悟を持つべき」と問いただしたところ、野田首相は、「国民のために決断しなければいけない、その時期は迫っている。そして私は政治生命をかけている。もう、それ以上のことは言わなくても、十分先生にはおわかりいただけると思います」と発言。これが「解散を示唆した」と受け止められた。6月13日の参院予算委員会でも、同様のやり取りが繰り返された。野田首相の答弁に、自民党の山本一太議員が、「適切な時期に判断するっていうのは、法案が通らなかった場合に、解散も総理の選択肢のひとつなんですか?そのくらいテレビで国民が見てるんですから言ってくださいよ!」と声を張り上げると、野田首相は、「テレビの前で軽々に言う話しではない。政治生命をかけて、成立を期している。このことは重ねて申し上げたいが、その上で、解散は軽々にすべき問題ではない」と応じた。民主党の川上義博議員も、「解散して、政権あるいは民主党に利があるのか」と質問。野党から、「党内でやってください!」というヤジが飛ぶなか、野田首相は、「衆議院の480人の議席が一瞬にして失われる決断。そのために民意を(問う)ということで、大事な重要な決断。『どういうときにどうすれば』ということをあまり詳しく論じる話ではない。あえて言うならば、『やらなければならないことを、やりぬいたあかつきに』適切な時期に民意を問う。これが基本的な姿勢」と、やはり含みを残している。解散可能性は「10~20%」?解散は、どの程度現実的にあり得るのか。政治ジャーナリストの山村明義さんは、解散の可能性は「10~20%」と、あまり高くないとみている。その理由のひとつが、民主党執行部の意向だ。例えば前原誠司政調会長は6月6日のBS朝日の番組で、解散後に参院選とのダブル選挙に突入した場合、「たまったマグマが爆発して、衆参ともに壊滅的なことになる」と、非常に悲観的な見通しを示している。選挙をしても民主党内の誰にとっても得にならない、というのが解散に否定的な見方の大きな根拠だ。その一方で、党内には反対派が多数存在する上、いわゆる「中間派」と呼ばれるグループも反発を強めている。いわば、野田首相だけが追い詰められている形で、野田首相周辺からは、「民主党に嫌気がさして、自民党と組んで党を割ってもいい」といった政界再編を望む声すらあがっているといい、永田町には「ひょっとしたらひょっとする」という見方もある。
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