2024年 4月 20日 (土)

アマゾンと楽天、電子書籍端末発売へ 国内市場、活気づくか

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   米アマゾン・ドット・コムが日本向けウェブサイトで2012年6月26日、電子書籍の専用端末「キンドル」を近日中に発売すると告知した。楽天も、電子書籍リーダーの専用サイトを立ち上げている。

   独自の端末の販売と電子書籍販売サイトの運営で、この2社がほぼ同時期に国内での事業を本格化させることになりそうだ。

コンテンツ不足の指摘、実は「じわじわ増えている」

日本でも「キンドル」が近々発売されるようだ
日本でも「キンドル」が近々発売されるようだ

   アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は、これまでに主要紙の取材で、2012年中に日本で電子書籍事業を開始すると明らかにしていた。「アマゾンジャパン」のサイト上に「キンドル、近日発売」と出たことで、本格上陸が間近に迫ってきたと推測できる。

   これまでも、キンドルの端末の一部は米アマゾンのサイトを通して日本でも購入可能だった。しかし、肝心の日本語の電子書籍はごく限られたものを除いてアマゾンでは販売していない。アマゾンと国内出版社との間ではこれまでも「契約合意か」という報道が何度か流れたが、今も公式発表はないままだ。

   アマゾンと並んで楽天も、国内の電子書籍市場でのシェア拡大をねらう。既に電子書籍販売サイト「Raboo」を運営しているが、2012年1月にカナダの電子書籍企業「コボ(kobo)」の買収を完了した。これでアマゾン同様にコンテンツと端末の両方を手がけることになる。

   楽天の三木谷浩史会長兼社長は、日経ビジネス電子版2012年2月21日のインタビュー記事で、アマゾンのキンドルについて「嫌がる国があるんです」と話した。出版は文化や教育の中核であり、それをアマゾンのような米IT企業にコントロールされるのを好ましく思わない国があるという。

   楽天が取り扱う書籍のタイトル数は約4万点。だが国内では、ベストセラー本の電子書籍が出ていないなど、出版社側が必ずしも前向きでないと三木谷社長は指摘する。これも出版社が「キンドルだけに占領されるのが嫌だった」ためで、楽天がコボを出せば「出版社にとって安心できる環境が整うんではないでしょうか」と強気。7月2日には、自ら記者会見で電子書籍事業について語る模様だ。

   国内の電子書籍市場はしばしば「コンテンツが少ない」と指摘されるが、野村総合研究所上級コンサルタントの前原孝章氏はJ-CASTニュースの取材に、「米国ほどではないが、じわじわと増えています」と説明する。アマゾンや楽天の本格参入は、「世間の耳目を集め、電子書籍がもう一度注目される意味で大きい」と言う。

「ブーム再到来」で評価高まれば商品も増える

   前原氏は、「出版社にとっては、販路が広がるなら『店』がどこでも構わないと考えるでしょう」と話す。対するアマゾンや楽天は、競合相手に先んじて自社の端末やコンテンツだけを売りたい、ほかの店では売らせたくないと思うだろう。その点で出版社側とは契約交渉の席で「せめぎ合い」があったと想像できる。一方で消費者にとっては、2社の参入でコンテンツの拡充が加速するのではとの期待が広がる。

   国内市場全体を考えたときに、コンテンツ自体はゆっくりとしたペースで増えている。ただし、消費者が実感できるほどのインパクトが足りないようだ。出版社側は「確実に売れる商品」に注力して電子化する傾向にあるため、一部のジャンルでは前年比1.5倍ほど点数が増えているものの、全体で考えると「爆発的な盛り上がり」につながっていないのかもしれない。

   電子書籍ストアを開設しても、いったん消費者から「取り扱い点数が少ない」と認識されると、その後の利用が広がらなくなってしまう。これまでもソニーのように、電子書籍販売サイトと専用端末を持つ事業者はあったが、いまひとつ力不足なのはこれが一因のようだ。買いたい本が少ないのに、「タブレット型端末と違って『読書専用』でしか使えない端末を購入する人は少ないでしょう」(前原氏)。

   アマゾン、楽天という強力なプレーヤーの登場で「電子書籍ブーム」が再到来し、「試しに読んでみよう」という人が増えたとき、「利用者側の評価が高まってコンスタントに書籍や端末が売れるようになれば、出版社側も商品ラインアップを増やしていくでしょう」と前原氏は予測する。逆に「ガッカリな結果」をもたらせば、市場が沈滞する恐れもはらんでいる。

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