2024年 4月 29日 (月)

「迷惑空き家」が増えている 全国で約180万戸、自治体も頭が痛い

   全国で空き家の増加が問題になっている。人口減少、核家族化などが原因とされるが、適切な管理がされないと、崩れて通行人にけがをさせたり、放火されて火事になったりなど防犯、防災上の大問題を起こしかねない。自治体もようやく対策に動き出した。

足立区は木造解体費用60万円補助

   2008年の総務省の調査によると、全国の空き家は757万戸。賃貸用や別荘などを除くと268万戸だが、これがすべて周囲に迷惑な空き家というわけではない。また、アパートやマンションを除く戸建ての空き家に限ると全国で181万戸あり、これが危険な「迷惑空き家」予備軍ということになる。東京都内では空き家75万戸のうち、用途が賃貸などではない「その他」が19万戸あることから、これが「迷惑空き家」の実態に近いとの見方を示す雑誌の特集記事もあった。

   このところ各マスコミで頻繁に取り上げられていることもあり、自治体の間に危機感が広がってきているのは確か。登記簿、戸籍などから所有者をたどり、行方を割り出して説得するのは、手間がかかる。ようやく家族に辿り着いても、「(所有者は)どこへ行ったか知らない」「関わり合いたくない」というケース、名義人が亡くなっていて相続人もはっきりしないような例もあるという。地縁の崩壊で家主が"消える"一面もあるのだ。

   そこで目立ってきたのが自治体の空き家条例。例えば東京都足立区は、2011年11月、老朽家屋に解体や回収を義務付ける都内で第1号となる条例を制定。解体すれば最大木造で50万円、非木造で100万円補助する規定を設けた。前年、古い建物の外壁が崩れ歩道に落下する事故があったのがきっかけだという。区の調査では、老朽化で倒壊の恐れがある建物は1700軒以上、うち50軒超は特に危険と診断され、今春から一部解体が始まっている。

更地にすると固定資産税が6倍になる

   空き家に関する条例は全国で50を超える自治体が導入済みといわれるが、内容はばらつきがある。一般に、財産権に絡むため、強制力はもたせにくく、足立区のように補助金を出して対応を促すのが基本。それでも、首長が危険な状況と判断した場合、足立区の条例などは「危険な状態を解消するための措置を取るべきことを指導し、または期限を定めて勧告することができる」などと規定してはいる。

   ただし、指導や勧告に応じない場合のペナルティといえば、所有者の氏名の公表というものが多く、基本的には"低姿勢"でのお願いベース。そんな中で千葉県松戸市は、「勧告」に従わない所有者らに対し、「期限を定めて、適正な管理に必要な措置を命ずることができる」として、最終手段として代執行を検討することもあるとの姿勢を打ち出しているのが目立つ。いずれにせよ、どこまで強く所有者に迫れるかは、今後も試行錯誤が続きそうだ。

   実は、空家の撤去が進まない背景には、更地にすると固定資産税が数倍に跳ね上がる税制上の問題もある。どんなバラックでも、200平方メートルまでは土地の固定資産税は6分の1に軽減される。土地を売却するには、更地にする必要があり、解体費用がかかる上、固定資産税が調整制度を活用しても「都内では概ね4~5倍に上がる」(都税事務所)ことから、空き家のまま、ほったらかしにされるというわけだ。「地価低迷が続き、そうした費用や税負担を値上がり分でカバーできないのも、放置を加速させているのでは」(不動産業界関係者)との声もある。

   空き家が増える背景には様々な事情がある。老親が亡くなり、郷里の実家が空き家になったが、誰も家を継がない、兄弟間で相続の決着がつかない、税制のためにあえて手を入れない、老朽化し、無人になった貸家を修理・解体する費用が家主にない、など。さらには地縁・血縁が崩壊する「無縁社会」で家主がはっきりしなくなる――空き家問題は少子化・人口減が進む日本社会の縮図であり、こんごさらに深刻化していくことになりそうだ。

(8月22日追記)

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