北海道の高橋はるみ知事は2012年10月18日、外国資本による森林買収の急増を背景に全国で初めて施行された「水資源保全条例」について東京・有楽町の日本外国特派員協会で講演した。不透明な水源地の取得については「何としても阻止していかなければならない」としながらも、条例に土地取引をやめさせるだけの強制力はないため、「極端なケースについては国の制度としてどう考えるか議論が必要」と、法律レベルでの対応を求めた。買収57件のうち21件が中国から全国で初めて施行された「水資源保全条例」について講演する高橋はるみ北海道知事ここ数年で、外国資本が水源となる森林を購入するケースが急増しており、北海道庁の調べによると、北海道では1039ヘクタールが外資に買収されている。現時点で確認されている買収の件数は57件で、主な内訳は中国21件、事実上香港資本が出資している英バージン諸島9件、シンガポール8件、オーストラリア5件。これらの売買のうち、なぜ取得したのか利用目的が明らかでないケースもあったため、道民から規制を求める声があがったという。農地の売買には事前許可が必要だが、水源地については事後に届け出るだけで良かった。そのため、事前の届け出が必要になる「水資源保全条例」が12年4月に施行された。条例では、「水資源保全地域」にある土地を売却する場合、土地の持ち主が契約の3か月前までに売却先の氏名や住所、土地の利用目的を道に届け出ることを求めている。高橋知事は、「我々が条例で規制をしたいのは、大規模な取得で、かつ目的が明らかでないもの。これをやはり、水資源を涵養(かんよう)、保全するために何としても阻止していかなければならない」などと条例の意義を強調した。「どこかの国を狙い撃ちして条例を作ったという事実は決してない」条例では、道は、届け出を受けた内容に基づいて、「水資源保全指針」などに従って「助言」をすることになっている。だが、この助言には強制力はなく、高橋知事も「今後、アドバイス(助言)に反するような大規模な開発を買い主が行おうとした場合、それを規制する体系にはなっていない。私たちが想定しているのは、そういう一連のアドバイスをしたけれども、従わないという事実を公表するというところまで。それ以上の規制を都道府県レベルで条例の中に導入するのは無理だと考えている」と、規制に限界があることを認め、「極端なケースが現実の問題として起こってくるようなことが想定される場合は、国の制度としてどのように考えるか、国民の皆様方に議論していただく必要が出てくる」「安全保障上の観点からの土地取引についての規制を導入するかどうかは、国のレベルでとして議論を深めてほしい」などと政府レベルでの対応を求めた。ただし、この条例が「中国による買い占めを警戒した」結果制定されたとの見方には「どこかの国を狙い撃ちして条例を作ったという事実は決してない」などと反論。「むしろ、中国からのお客様は大歓迎。中国のお客様をお迎えするための観光インフラ整備を中国資本の方が北海道内で展開していただくことも大歓迎」と、尖閣諸島問題で落ち込んだ観光客数の回復に期待を寄せた。
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