2024年 4月 17日 (水)

小沢氏の「無役」「一兵卒」宣言に疑いの目 先行き不安視される未来の党

   「卒原発」を旗印に、滋賀県の嘉田由紀子知事が党首となって2012年11月28日に発足した日本未来の党。だが、結成まもない新党の先行きについては今から危ぶむ声が絶えない。

   嘉田知事を党首に担いで実質的に新党設立をお膳立てしたのが小沢一郎氏だからだ。小沢氏の処遇は「無役」「一兵卒」の予定とされるが、多くの永田町関係者は「『未来』は事実上、小沢新党」「権力の二重構造は必ず破綻する」とみている。

嘉田氏、当初は小沢氏主導の新党に警戒感

   「嘉田さんが国のために動いてくれるなら、『国民の生活が第一』がなくなっても、自分が代表から降りてもいい」。産経新聞などによると、嘉田知事が新党設立を決めたのは11月24日に会談した時の小沢氏のこの一言だったという。

   実は小沢氏は、10月中旬ごろから嘉田知事に対して「脱原発」で結集する新党結成と党首への就任を要請していたのだ。一方、嘉田知事は脱原発の新党には賛成しながらも、自らが小沢氏の「操り人形」とみられることを警戒し、要請を拒んでいた。

   大手メディアによる世論調査の政党支持率で「国民の生活が第一」が1~2%に低迷する中、政界生き残りをかける小沢氏は11月24日、再び嘉田知事を説得。亀井静香氏や河村たかし・名古屋市長らから新党参加の合意を取り付け、「新党イコール小沢党ではない」という外形を整えたうえで、熱意で知事を押し切った。

   読売新聞によると、小沢氏周辺の関係者は「嘉田氏を前面に出せば女性層や主婦層にも受けるだろう。小沢さんは選挙実務を仕切ればいい。これで戦う態勢ができた」と語ったという。

   だが、総選挙を前にした小沢氏のこうした仕掛け、新党からの「小沢隠し」を政界関係者がすんなり受け入れるはずはない。2010年、鳩山首相の退陣に伴って小沢氏も民主党幹事長を辞任した際、「これからは一兵卒として微力を尽くす」と述べたものの、言葉とは裏腹に小沢チルドレンらを率いて党内を揺さぶり続けてきたのは周知の通り。

   しかも、嘉田氏は党代表でありながら県知事も兼任し、未来の党に合流する国会議員約70人の8割が「国民の生活が第一」の所属なのだ。

   未来の党から連携を打診されたみんなの党の渡辺喜美代表は「背後の大物が嘉田さんを操ることにならないよう願いたい」。自民党の安倍晋三総裁ら自民党幹部は「一緒にやれば結局は小沢氏の党になる」「嘉田さんはオブラートのようなもの。『卒原発』も小沢氏の生き残りの手段にすぎない」と話した。

   小沢氏とは民主党内で対立し合う関係だった菅直人前首相はオフィシャルブログで「嘉田新党が立ち上がる。(中略)嘉田さんは本物の環境派だが、党の実権を小沢さんが握る構造は必ず破綻する」と警告している。

新聞各紙「小沢氏の影」を指摘

   嘉田新党には新聞各紙の論調も冷ややかだ。未来の党に関する11月28~29日の記事には「嘉田新党 小沢氏の影」といった見出しが付けられた。

   さらに朝日新聞は29日付朝刊の社説で

「小沢氏は選挙の顔として嘉田氏をかつぎ、生き残りのために結党をおぜんだてした」
「新党を作っては壊し、力を保ってきた小沢氏の政治スタイルが復活するなら、脱原発も選挙向けの口実に終わる」

と指摘。

   毎日新聞も同日の社説で

「嘉田氏は知事にとどまる予定だけに、不透明な二重権力構造としない党の体制が問われる」

と注文をつけた。

    これらの批判や警告に対し、未来の党代表代行の飯田哲也氏は「小沢氏は無役だと理解している」。嘉田氏は「小沢氏の経験は尊重しながらも、女性や若者の声を反映できる仕組みを党の中に埋め込んでいきたい」と話しているが。

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