2024年 4月 29日 (月)

特集「尖閣最前線・石垣島はいま」第4回
海外からの観光客は台湾が断トツ 中国市場の開拓「今は難しい」ジレンマ

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   中国で反日活動が激化して以降、日本に来る中国の観光客は激減した。2011年3月11日の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故により減った訪問者数がようやく回復していただけに、観光産業にとっては大きな打撃となった。

   石垣島の場合、もともと中国本土からの観光客は少ない。だが2013年3月に新空港の開港を控えており、将来的には中国からの観光客増に期待したいところだ。日中関係が「最悪」となっている今、新市場の開拓は壁に当たっている。

石垣島では中国からの観光客はもともと少ない

真冬とは思えないほど美しい海の光景が広がる
真冬とは思えないほど美しい海の光景が広がる
「海外からもっと大勢来てもらいたいですよ。もちろん、中国からのお客さんも歓迎します」

   島の北西部、サンゴ礁の海が美しい川平湾近くでペンション「海の家族」を経営する新盛裕二郎さんはこう口にした。宿泊客はリピーターが多く、毎年訪れる外国人もいるという。中国人客が来ても対応できるように、中国語でペンションの説明ほか会話のやり取りをマニュアル化したものも備えられていた。

   石垣島にやって来る外国人観光客の出身地で圧倒的に多いのは、台湾だ。石垣市観光振興推進課によると、2012年10月の訪問者数は5万8568人に上る。これに対して同月の中国からの観光客はわずか49人。香港や韓国にも大きく離されている。実は台湾と石垣の間には、時期によってクルーズ船が就航しており、比較的行きやすい。記者が訪れた12月下旬はクルーズ船のシーズンが終わっていたが、島の中心部の飲食店で聞いたところ、最盛期には「店内がすべて台湾の観光客で埋まるほど」多くの人の姿を見ると話した。

   2012年9月の尖閣諸島国有化に対する中国での大規模な反日の動きで、国内の観光業は大きな影響を受けた。内閣府の2012年12月4日付の発表資料を見ると、中国人観光客の数は沖縄県だけでも7月の1万8700人から10月には2900人と、実に84%減となった。香港や台湾からの訪問者もそれぞれ8200人から3400人、2万3200人から1万5800人と大きく減らしている。

   一方、中国から石垣島を訪れる人数はもともと少ないこともあり、島の観光産業に与える影響はほとんどなかったと考えられそうだ。理由は不明だが、香港や台湾の観光客はむしろ2012年7月より10月の方が増えていた。

   将来を考えると、中国は石垣にとって無視できない市場だろう。まだまだ訪問客は少ないとはいえ、2011年にはほぼゼロだったことを考えると2012年は徐々に増えているからだ。ペンション「海の家族」でも中国からの客を受け入れたが、思わぬ「トラブル」に見舞われた。

市観光担当課は「上海などでの誘客活動は必要」

ペンション「海の家族」を経営する新盛さん
ペンション「海の家族」を経営する新盛さん

   2012年初め、新盛さんは地元の業者と協力して、中国からダイビングに訪れた5、6人の観光客の食事をペンションで請け負った。このとき宿泊はしなかったが、夏には再訪するとの話がまとまった。「この人たちがサービスに満足して、帰国後に口コミでうちのペンションの話を広げてくれれば新規の顧客が増えるかもしれない」と、期待も高まった。

   ところが、夏の訪問は突然キャンセルされたという。尖閣問題の影響があったのか、いまだに理由は不明のままだ。中国市場開拓の第1歩となりえただけに、新盛さんは落胆を隠せなかった。

   地理的に近い台湾に加えて、人口が多い中国の観光客を呼び込みたいのは新盛さんだけでないだろう。2013年3月には石垣新空港の開港を控えている。市観光振興推進課はJ-CASTニュースの取材に対して、これまでに中山義隆市長を中心に韓国や香港で誘客活動をしてきたという。中国については「(石垣市にとって)観光産業はリーディング産業。中国は大きなマーケットと考えており、上海などでの誘客活動は必要です」と回答した。

   2012年末時点で石垣島に路線を持つ国際線は台湾の航空会社に限られるが、市長らは新空港での国際定期便の誘致にも積極的だ。格安航空会社(LCC)の人気が高まっていることもあり、中国からの直行便も就航させて観光客の大幅アップにつなげたいところだろう。

   ただ現状では、先行き不透明だ。地元の識者に取材すると「尖閣問題が暗礁に乗り上げている今、中国で大々的な観光プロモーションは打ちにくいだろう」とみる。沖縄での観光の場合、中国人は「買い物がメーンで、リゾートでのんびり過ごすスタイルはまだ定着していない」という。新空港に合わせて石垣の魅力を伝え、リゾート観光の楽しさを提案したかったところだが、当てが外れた格好となっている。

   沖縄県が発表している「入域観光客統計」をみると、2008年の593万4300人をピークに減少傾向で、2011年は震災の影響で552万8000人まで減らした。「海の家族」オーナーの新盛さんは、データをとったわけではないとしつつも、感覚的に2012年の方が前年よりも宿泊客が少ないとこぼす。石垣島からフェリーで10分の距離にある竹富島では、飲食店の女性が「過去4年ほど、お客さんが減り続けている気がします。以前は12月の『シーズンオフ』でも大混雑だったのに」と話した。

   やや頭打ちの感がある観光客誘致に、新空港を「ウリ」に中国で攻勢に出たいところだが、今のところは身動きが取れなさそうだ。

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