2024年 4月 29日 (月)

「原発回帰」安倍政権 再稼働の行方(9・終)
最初は伊方、続いて玄海や川内が有力?

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   国内に50基ある原発のうち、関西電力大飯原発3・4号機(福井県おおい町)をのぞく48基は停止中だ。火力発電の代替でコスト増を嫌う電力会社は早期の再稼働を目指すが、そのためには2013年7月にも法制化される見通しの新安全基準をクリアすることが不可欠だ。

   新基準の骨子(案)はすでに13年2月に公表されている。電力各社が公表している安全対策の進み具合と照らし合わせてみると、現時点でこれを満たす原発は皆無。だが、一部の原発には、一度再稼働をしてから必要な設備を設置することが認められる「抜け道」も用意されている。最初に再稼働にこぎ着けそうなのは、どの原発か。

13年9月に大飯が定検入り、当分「原発ゼロ」続く?

東京電力柏崎刈羽原発ではフィルターベントの基礎部分の工事が始まっている
東京電力柏崎刈羽原発ではフィルターベントの基礎部分の工事が始まっている

   原子力規制委員会が13年3月19日、新基準の施行に向けて公表した「基本方針案」よると、大飯原発の3、4号機は、7月の新基準施行後も稼働を認められる。ただ、3、4号機は13年9月に定期検査(定検)入りする予定で、約2か月にわたって新基準に適合しない状態で稼働することになる。もちろん、その後の再稼働のためには新基準を満たす必要があるが、基準で求められている免震重要棟の設置は早くても2015年度。当分再稼働は不可能で、再び「原発ゼロ」の状態が続く可能性もある。

   残る48基についてはどうか。基準の中で最もハードルが高いとみられているのが、事故が起きた際に格納容器内の圧力を下げるためのフィルター付きベント(排気)装置だ。これが唯一着工されているのが東京電力の柏崎刈羽原発だが、配管の耐震設計を見直す必要があり、工事に着手できているのは基礎部分だけ。本体部分の工事は始まっておらず、完成のめども立っていない。

PWRは再稼働後にフィルターベント設置すればいい

   事故を起こした福島第1原発や柏崎刈羽原発では沸騰水型炉(BWR)と改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を使用しているのに対して、西日本の原発の多くが加圧水型軽水炉(PWR)を採用している。

   新基準では、PWRについてもフィルターベントの設置を求めている。だが、いったん再稼働した後で設置を認める「猶予期間」を設ける見通しだ。PWRはBWRに比べて格納容器が大きいため、フィルターベントがなくても当面は安全性が保たれるとみられているからだ。

   そうなると、PWRを設置する原発は再稼働が近づくことになる。その中でも新基準を満たしているとみられるのが四国電力の伊方原発(愛媛県伊方町)だ。すでに免震重要棟が完成している上、敷地は海抜10メートルにあり、内海に面していることもあって防潮堤などの新たな津波対策の必要性がないとされているからだ。さらに、活断層も確認されていない。九州電力の玄海原発(佐賀県玄海町)や川内原発(鹿児島県薩摩川内市)も似たような状況で、免震重要棟は15年度に完成予定。伊方に次いで再稼働が近いとみられている。

   反原発派も同様に受け止めているようで、毎週金曜日に首相官邸前で行われるデモのシュプレヒコールでは、大飯原発の停止を求める声に並んで、伊方原発の再稼働に反対する声が多い。

新安全基準を満たせば、最長20年まで運転延長

   12年6月に成立した改正原子炉等規制法では、原発の運転期間を原則として40年間に制限している。圧力容器や配管の経年劣化を考慮したためだ。50基のうち17基は運転開始から30年を超えており、そのうち日本原子力発電敦賀1号機と関西電力美浜原発1・2号機の3基は40年を超えている。これらの老朽原発については、仮に安全対策を重ねて再稼働に持ち込んだとしても運転期限までに残された期間は短く、経済的には再稼働よりも廃炉を選択した方が合理的だという考え方もできる。

   ただし、原子力規制委員会が13年2月27日に示した方針案では、新安全基準を満たし続けられると判断されれば、最長20年まで運転の延長を認めることになっている。これを踏まえると、電力会社が「再稼働して60年動かした方が経済的」と判断する可能性も残されている。(連載終わり)

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