2024年 5月 6日 (月)

「フジ三太郎」作者サトウサンペイさんインタビュー
「吉永小百合さんにお酌してもらった」「アレー、顔見てないよ」

   「サンペイさん、美女に会う」――今回は、「フジ三太郎」の作者サトウサンペイさんが吉永小百合さんと対談したときのことです。吉永さんは高校生のときに演じた「キューポラのある街」のヒロイン役で一躍注目を集め、昭和後期、その可憐さで他の女優とは別格の人気を誇りました。熱心なファンは「サユリスト」と呼ばれ、「隠れサユリスト」も含めて、今も吉永さんには特別の思いを持ち続けている人が少なくありません。その吉永さんの絶頂期に、サンペイさんは新聞の企画で対談しました。周囲に嫉妬と羨望の嵐が巻き起こり、サンペイさんも大緊張です。電子書籍『フジ三太郎とサトウサンペイ』第13巻のインタビューから抜粋します。インタビュアーは、週刊朝日連載「夕日くん」の担当編集者だった池ちゃんこと池辺史生さん。意外にウブなサンペイさんの横顔が浮かび上がっています。どことなくフジ三太郎に似ています。

サンペイ この間、古いスクラップ帳や雑誌に掲載された記事を何十年ぶりかに見ていて、吉永小百合さんとの対談記事を見つけた。これは、池ちゃんに見せなくちゃ。
池ちゃん すごい量のスクラップですね。いろんな人と対談しているけど、吉永小百合さんとも対談していたんだ。吉永さんは最近も「北のカナリアたち」で主演を務めている。まだ第一線ですね。
サンペイ あれは夕刊フジだったと思う。
池ちゃん 小百合さんの映画は観ていたの?
サンペイ 「キューポラのある街」(1962年)と「伊豆の踊子」(1963年)くらいかなあ。しかし、こうして昔の記事をひっくり返しても、「スクラップ帳の間からヘソクリが100万円出てきた!」なんてことはないねえ。

「コーポラスのある街」なんて言うなよ

吉永小百合さん。今も「サユリスト」は格別な思いを抱く。2010年3月撮影
吉永小百合さん。今も「サユリスト」は格別な思いを抱く。2010年3月撮影
池ちゃん あれ、この記事じゃないですか? (スクラップの山から探し出す)「爛漫美女対談」。やっぱり醸造メーカーの広告ページだ。1ページ使って対談していますね。吉永小百合さん、はちきれんばかりの若さで可愛いなあ。サンペイさんの顔も、ずいぶんうれしそうじゃない。2人の写真だけじゃなくて、サンペイさんの絵も載っているね。
サンペイ (照れくさそうに)そりゃあ、誰だって小百合ちゃんの二十ごろの顔を見れば、うれしそうな顔になるだろう。
池ちゃん 昭和47年(1972)だから、「フジ三太郎」の連載が始まってから、7年目ですね。なになに、へんなこと書いてあるよ。サンペイさん、友だちに「おまえ、よく間違ったこと言うから、『コーポラスのある街』なんて言うなよ」と言われたの?
サンペイ そう、言われた。「キューポラのある街」が正しい。住宅難で、あのころ「コーポラス」いう住宅言葉が流行っていたんだ。
   記事の内容は面白いね。対談には編集者たちが10人くらい付いてきた、全く関係ないやつが。
   吉永さんにお酌してもらって「甘口がお好きですか?」と聞かれてねえ、
「いや、何でも、あなたのお酌なら何でも美味しいです」。
「先生のお酒は陽気な方なんでしょう?」
「ええ、おしゃべりになるんです」
「あら、私もそうなんです」
「アッ、趣味は同じです」
なんて、それだけは覚えているよ。うふふふ……。

小百合さんと趣味が一緒!

池ちゃん サンペイさん、うれしさがこぼれ落ちそうな笑顔だ。
サンペイ そうかなあ。ぼくは、男女共学じゃなかったでしょ。女性に対しておびえてしまうところがあって(笑)、目の前に、世にも稀なきれいなふわーっとした人がいたら、前を見られないよ。あのとき、お酒もろくに飲んでないねえ。
池ちゃん そうか、サンペイさんのそういうところに女性が参っちゃうのかなあ。カッコもつけてるんじゃない? 「いやあ、まさに春らんまんですなあ。春宵一献値千金…。しかし"サクラの下はただ男ばかり"という詩もある。いまはにぎやかに話しあっていても、終わればまた別の世界…もう一生会えないかと思うと、ああむなしいなあ」だって。ハハハ。
サンペイ うそ! そんなこと、おれ言ってない。そのとき、小百合さんは「ホホホ」と笑って、「サンペイさんって詩人ですのね。どうぞ。おあけになって」と言ったんだ。
池ちゃん そうかなあ……。この後もいいじゃない。
   「私、夕日くんのファンなんです」「時間がもったいないから漫画の話はやめましょう」だって。カッコイイ。
   「仕事とスキー以外は何が好きですか?」「旅行です」「あれー、ぼくと一緒だ。また趣味一緒だ!」だって。かなり舞い上がっている、舞い上がっている。
サンペイ 舞い上がったんだろうと思う。その証拠にね、対談の後の独白を読めばわかる。対談は目白の「蔵」という日本料理の店でやったんだけど、お酒もそんなに飲んでない。料理だって、たくさん並んでいるのに、ぼくは2品食べただけ、吉永さんは3品だった。見るべき点は見ている。
   対談の後、編集関係の人と新宿の居酒屋で飲み直した。お店で、小百合さんと握手したからおしぼりはいらないよ、手はしばらく拭かないから。酒は甘口ね、山かけちょうだい、ハマグリ焼いてちょうだいなんて、いつもの調子でやりながら、対談の感想を聞かれた。
「吉永さんの服、ボタンがたくさんついていましたね」
「エッ? おれ、それ見てない。服の色は全部黄色だったね」
「靴下は黒でしたね」
「あれ、それも見てない。まてよ、おれ、吉永さんの顔は1秒以上見てなかったんじゃないかな。アレー、顔見てないよ」
池ちゃん あはは、サンペイさんらしいのかなあ。でも、そういうことって、あるなあ。フジ三太郎の連載が10年、15年と節目を迎えたときに、朝日新聞で特集が組まれました。確か、吉永さんは15周年のときにメッセージを寄せています。
「10年ほど前、対談で作者とお会いしました。よくお話しになる、本当に楽しい方でした。それ以来、毎朝、サトウさんと三太郎さんをダブらせて、一人でクスクスと笑っております」 とありますよ。
サンペイ その後、テレビの対談に2回招かれた。後のほうは、結婚発表の直前だった。相手の岡田太郎さんはぼくと同い年。ならば、おれにも可能性があったんだあ。

   この後、吉永さんの笑いを誘ったひとり旅の話をたっぷり披露しています。電子書籍『フジ三太郎とサトウサンペイ』(https://www.j-cast.com/santaro/)第13巻は5月10日から発売中です。

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