2024年 4月 29日 (月)

白鵬「モンゴル相撲」挑戦に意欲 持久戦に持ち込まれたら苦戦必至

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   大相撲の横綱・白鵬が母国で開かれるモンゴル相撲の大会に出場する意向だという。7月の名古屋場所後、父の出身地での大会に照準を合わせているそうだ。

   モンゴル相撲の正式名称は「ブフ」で、地域によってルールや作法に違いがある。大相撲では優勝25回を誇る白鵬だが、経験の浅いブフでは戸惑うかもしれない。

モンゴルと内モンゴルではルールや作法に違い

ブフの取り組みは組み手から始まる(写真提供・富川力道氏)
ブフの取り組みは組み手から始まる(写真提供・富川力道氏)

   白鵬が報道陣を驚かせた。2013年6月10日の朝稽古が終わった後に、7月下旬にモンゴルで開かれるブフの大会に「出ようかな」と意欲を示したというのだ。父ムンフバトさんの出身地で開かれる県大会で、大相撲名古屋場所の千秋楽から数日後に予定されている。ムンフバトさんはモンゴルの全国大会で何度も優勝している名力士だ。

   白鵬が県大会に出場して優勝し、さらに全国大会でも頂点を極めれば、大相撲の現役力士としてはもちろん初の快挙となる。もっとも、どこまで真剣に出場を視野に入れているかは分からない。本気で「参戦」となれば、前例のないケースに日本相撲協会がどう対応するかは注目だが、もし白鵬が県大会レベルであっさり敗退でもしたら大相撲の威信にかかわると心配する声も出ている。

   日本では「モンゴル相撲」とひとくくりにされるブフだが、実際はかなり奥が深い。「モンゴル・ブフ・クラブ」のウェブサイトによると、土俵がないのが大相撲との大きな違いで、寄り切りのような技は決まり手にならず、勝負がつくのは投げや足技が中心となる。両力士が離れたところから立ち合いでぶつかり合うのではなく、組み手からスタートするのも特徴だ。

   地域によって異なるスタイルのブフが存在しているが、主流はモンゴルの「ハルハ・ブフ」と、中国・内モンゴルの「ウジュムチン・ブフ」。ハルハ・ブフでは力士が入場時に両手を高々と掲げて、まるで鷹が翼を羽ばたかせるようなポーズをとる。足を取る技が認められ、頭や背中、ひじ、ひざが地面についたら負けだ。一方ウジュムチン・ブフでは、全身を左右に大きく揺らす「獅子の舞」で入場し、会場を右回りに3周するのが作法。勝敗も、足の裏以外の体の部位が少しでも地に触れたら決まる。衣装も双方で随所に違いがみられる。

   ブフに詳しく、自身も力士経験のある日本ウェルネススポーツ大学准教授の富川力道氏は、「モンゴルや内モンゴルでは、子どもたちは物心ついたころからブフに親しんでいます」と話す。近年では女性力士も誕生しており、競技人口は増えているそうだ。

体重が武器にならず、かえって動きが鈍くなる

   大相撲とブフでは、力士に求められる能力も違いが出てくる。富川氏はJ-CASTニュースの取材に、「大相撲では立ち合いが勝負の行方を左右するので、瞬発力が重要。一方ブフでは組み手争いから長時間戦える持久力が欠かせません」と説明する。

   また大相撲では、ぶつかり合ったり押し出したりする際に体重が大きな武器になる。白鵬は150キロ台で、幕内力士の平均体重は160キロに達している。これに対してブフの場合は「100~120キロの力士が最も活躍しています」(富川氏)。土俵がないため体重を生かした攻めが必ずしも有効でなく、かえって動きが鈍くなったりスタミナを消耗したりする原因になりかねない。

   あくまで仮定の話だが、白鵬が今のコンディションのままブフに挑戦したらどうなるだろうか。富川氏は「もちろん実力面では申し分ありません。ただ(大相撲のように)一撃で相手を倒せず持久戦に持ち込まれたら、横綱といえども苦戦は免れないでしょう」と話す。複数のスポーツ紙によると白鵬は、6月上旬にモンゴルに帰国した際にブフの稽古に参加したが、「勝つのは難しい」「全然違う」とコメントしていた。勝手が違う競技であることは百も承知のようだ。

   だが一方で、「例えば白鵬関がナーダム(ブフの全国大会)の1か月前から現地で特訓を積めば、優勝できるかもしれません」と富川氏。実際には2か月に1度の本場所に全国巡業、各種イベントと予定が詰まっているうえ、毎日の稽古はおろそかにできない。角界の顔である横綱が、本業以外の理由で長期間不在にするのを相撲協会としては黙認するわけにはいかないはずだ。現実的に考えて「モンゴルでの集中特訓」は難しそうだが、日本とモンゴル両国で白鵬が「ダブル横綱」になる姿を見たいファンはいるだろう。

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