2024年 4月 28日 (日)

デジタル時代の新聞はどうあるべきか 回答が出ないまま、ワシントン・ポスト紙、アマゾンCEOに250億円で売却

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   週末明けの月曜日夕刻、米マスコミに衝撃波が走った。世界最大の通販サイトAmazon.comの創業者でCEOを務めるジェフ・ベゾスが米国を代表する有力紙「ワシントン・ポスト」紙を個人で買収すると発表されたからだ。買収額は2億5000万ドル(約250億円)だが、ワシントン市内にある同紙本社ビルは含まれていない。

   ワシントン市内の同紙本社の講堂に集まった社員を前に、親会社ワシントン・ポスト・カンパニーのドナルド・グラハム会長はまさかと思われた決断の背景をこう説明した。

デジタルはデジタルネイティブにまかせろという当然の結論に至る

   新聞業界が回答のないチャレンジに直面するなかで、公開会社という会社形態がワシントン・ポスト紙にとってベストなのかどうかが疑問であった。さまざまなイノベーションを実行してきたが、減収を補うことは出来ず、収益は7年連続で下降線をたどった。

「我々の解決策は経費削減しかなかったが、それにも限界があることは十分承知していた。それでも潰れることはないだろうと確信していた。問題は生き延びるだけでは十分ではないことだ」

   デジタル時代の新聞はどうあるべきかという問いへの答えが求められているなかで、グラハム会長はサジを投げてしまったわけだ。活字に愛着を覚える世代にとって所詮デジタルは異国の地である。デジタルはデジタルネイティブにまかせろという当然の結論に至り、その延長線上に個人的にも親しいベゾスが浮上してきたのであろう。

社名を変更し、教育・メディア企業として活路を見いだす

   ベゾスはワシントン・ポスト紙社員への声明文のなかで新聞作りへの意気込みを以下のように表現する。

「今後もちろん変化があるだろう。だが地図は存在せず、経路を変えることは容易でない。発明が必要だ、つまり実験することが必要なのだ。我々の試金石は読者だ。読者の関心を理解し、そこを出発点にして紙面作りをする。私は発明の機会に興奮を覚えるだけでなく楽観的でもある」

   ベゾスは同紙の日常業務に関与する意図はなく、現在の経営および編集の幹部を残留させる計画だという。当面は現状を維持しながら徐々に実験を展開することになるだろう。だが、個人資産が総額232億ドル(約2兆3200億円)とも推測されるベゾスだけに懐はびっくりするほど深く、本気になって新聞改革に取り組めば、ワシントン・ポストの救世主になるかもしれない。

   一方、親会社のワシントン・ポスト・カンパニーは近く社名を変更し、教育・メディア企業として活路を見いだすことになる。新聞事業は全収入に対する比率が2012年度で約14%しかなく、そのうえ出血が止まらない状態だったので、同社の今後の展望を考えれば、今回の決断は株主から拍手で迎えられるだろう。

   一つの時代が終わったのであろう。

在米ジャーナリスト 石川 幸憲

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