2024年 5月 1日 (水)

「イプシロン」ロケット国民熱狂の理由 小惑星探査機「はやぶさ」後継のイメージが大きい?

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   日本中をクギ付けにしたともいえる新型固体燃料ロケット「イプシロン」の打ち上げ。2013年8月27日、内之浦宇宙空間観測所のある鹿児島県肝付町には、その瞬間を見ようと見物客約1万5000人が詰めかけた。しかし、打ち上げは中止。大きなため息が漏れた。

   それにしても、なぜイプシロンに、これほど熱狂するのだろうか――。

「こんなことは初めて」町人口の9割もの人が訪れた!

「イプシロン」ロケットに国民熱狂!?(写真は、宇宙航空研究開発機構の「イプシロン」特設サイト)
「イプシロン」ロケットに国民熱狂!?(写真は、宇宙航空研究開発機構の「イプシロン」特設サイト)

   鹿児島県肝付町は、太平洋に面した大隅半島東部にある、人口約1万7000人の小さな町だ。そんな町に、家族連れを中心に推計で1万5000人もの見物客が「イプシロン」の発射を目撃しようと訪れた。

   夏休みということもあるが、駐車場に並ぶクルマのナンバーは、名古屋や大阪、遠くは札幌から。推計で3900台のクルマが埋めた。

   肝付町は、内之浦宇宙空間観測所での打ち上げが7年ぶりなことや、夏休み期間中でもあることから、ロケットの発射当日は多数の見学者を予想。これまで宮原見学場だけだった一般見学者用の見学場を5か所増やして受け入れを準備。内之浦漁港や肝付町文化センターにはパブリックビューイングも用意した。

   また、宮原見学場への入場車両を事前抽選にしたところ、350台の当選枠に対して、全国から30倍近い約9700台の応募があった。

   町の担当者は、「これまでも衛星を搭載したロケットの打ち上げのときには、多くの天文マニアやロケットファンが見学にやって来ました」と話す。イプシロンの先代、「M5」ロケットが最後に打ち上げられた2006年には交通渋滞が起こり、緊急車両が通行できなくなる事態を招いたこともあり、今回はフェイスブックやLINEなどを駆使して道路情報や発射場の情報を提供するなど、「警察と協力して万全を期した」。

   それでも、町ではほとんどPRしていないのに、「こんなこと(1万5000人の見物客が訪れた)は初めて」と、驚いている。

人工知能を搭載した世界初の小型ロケット

   肝付町は今回の「イプシロン」人気を、「『はやぶさ』効果が続いている」とみている。内之浦宇宙空間観測所は、2006年9月に小惑星探査機「はやぶさ」を搭載した「M5」ロケットが発射された場所でもある。

   「はやぶさ」といえば、「奇跡の帰還」を果たした探査機で、映画にもなった。肝付町は映画のロケ地でもあり、「スペースサイエンスタウン」として「宇宙」で町おこしを進めている。

   「町を訪れる天文マニアやロケットファンには『はやぶさ』を感じたいという人は少なくないですし、『はやぶさ』が帰還してから、町を訪れる人も増えました」と、町の担当者は話す。

   そのM5の後継ロケットが、イプシロンだ。最大の特徴は、ロケット自身に点検機能をもたせ、地上での点検作業を大幅に簡素化できる「人工知能」を搭載していること。それにより、少人数での運用を可能にし、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は「極端にいえば、パソコンをネットワークに接続するだけで、どこからでも管制が行えるようになる」という。

   さらには、M5でロケットを射点に設置してから打ち上げまでに42日かかっていた日数が、イプシロンではわずか7日に短縮できる。7日は、他国のロケットをみても圧倒的に短期間で、「世界でも最も簡単に打ち上げられるロケットの一つ」(JAXA)。しかも、打ち上げコストは「M5」のほぼ半分の38億円という。

   いわば、「はやぶさ」を搭載して打ち上げられたM5より、小型だが新たな技術が詰め込まれたJAXAの「自信作」なのだ。

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