2024年 4月 29日 (月)

温室効果ガス、日本は2005年比3.8%減 「深く失望」「決定見直せ」海外から非難集中

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   政府が、2020年までの国内の新たな温室効果ガス削減目標を2005年比3.8%減とする方針を決めた。だが、先進国が排出削減を義務付けられた「京都議定書」の基準年(1990年)との対比では約3.1%増と増えてしまう。

   全原発が停止する中で、民主・鳩山由紀夫政権が2009年に掲げた「1990年比25%減」とは比べようもないが、京都議定書の第1約束期間(2008~12年)の「1990年比6%減」よりも大幅に甘い目標であり、 国際的には厳しい評価にさらされている。

産業部門の排出量は12%増える

鳩山政権は「チャレンジ25キャンペーン」を始めた
鳩山政権は「チャレンジ25キャンペーン」を始めた

   環境省によると、新目標のうち約2.8%分は、植林などを推進し「森林がCO2を吸収した」とみなし、そのほかの省エネ効率向上や再生可能エネルギーの普及などを「総合的に検討して1%減」、合わせて3.8%減とした。厳格な数字の内訳はないも同然だ。これまで打ち出してきた目標などから算出すると、今回の目標の達成には産業や家庭など全部門でエネルギー効率を平均20%向上させる必要があるというが、年2%の経済成長を前提にしているため、産業部門の排出量は12%増える計算だ。

   ポーランドで開催中の国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)で石原伸晃環境相が表明した。鳩山政権の目標「1990年比25%減」を正式に撤回し、新目標を同条約事務局に登録することになる。批判をかわすために、併せて打ち出す外交戦略は、「美しい星への行動」と銘打って、前回の安倍政権時の2007年に掲げた「2050年までに世界全体で半減、先進国で80%減」の長期目標は維持し、そのために2013年から3年間に途上国に160億ドル(約1兆6000億円)を支援するとともに、革新的技術の開発に向け、官民合わせて約11兆円の国内投資を行うことなどが柱だ。COP19では、途上国が先進国に対して求める支援額が今後3年間で350億ドルに達するとされ、政府関係者は「日本がその3分の1を負担する」と胸を張る。

   今回の目標の特徴は、暫定的、かつ妥協の産物といえる。目標設定の過程で温暖化対策を進めるには高い目標提示が必要とする環境省と、原発再稼働が見通せない中での目標設定に反対する経済産業省が対立したが、東京電力福島第1原発事故を受けて、政府は新たなエネルギー政策を検討している最中であるため、「原発稼働ゼロ」と仮定して暫定的な目標との位置づけでようやく決めた経緯がある。

   原発を含めたエネルギーのベストミックスが決まっていく中で、新たな目標を提出することを念頭に置いている」(茂木敏充経済産業相の15日の閣議後会見)として、将来の原発比率を決めた後に、温室効果ガス排出量削減の政府目標も改定されるというのが暗黙の了解になっている。

日経新聞も「余りにも低水準」と指摘

   日本の超低目標は、予想通り、早速国際的な非難にさらされた。COP19の場で2013年11月15日、会見に臨んだ日本代表団は海外メディアから厳しい質問を浴びた。会議に参加している欧州連合(EU)代表団の会見では「大幅に弱まった目標に失望した」「先進国はリーダーシップを示さなければならない」との厳しい指摘が出た。

   エドワード・デイビー英エネルギー気候変動相は「深く失望した。日本政府に対して決定を見直すよう求める」との見解を示し、温暖化の影響を受けやすい太平洋の島国のグループも「我々をより大きな危険にさらす」との緊急声明を発表。中国代表団も「国際的な責務を果たすべきだ」とくぎを刺した。日本代表団が15日に途上国や島国のグループに「1.6兆円支援」を説明したのに対しても、反響はほとんどなく、むしろ、3.8%減目標に批判が集中する結果になったという。

   国内のメディアからも厳しい声が上がる。脱原発の「毎日」社説(11月16日)は「問題は新目標の低さにある。……これでは、世界の温暖化対策に水を差しかねない」と批判。原発再稼働派の日経も「環境先進国を自負する日本としてあまりに低水準だ」も手厳しい。

   今回のCOP19は、温室効果ガス削減のための新たな国際枠組みの2015年合意・2020年からの実施に向けた重要な議論の場。欧州の「90年比で20%または30%削減」、米国の「05年比で17%削減(90年比3%減)」より見劣りする目標を掲げ、日本がCOP19からの議論にどうかかわるのか、厳しい道のりが待っている。

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