2024年 4月 26日 (金)

「昆虫交尾図鑑」の著作権侵害疑惑に出版社が反論 謝罪した著者と食い違いが生じた理由

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   写真模写による著作権侵害疑惑がかけられている「昆虫交尾図鑑」について、出版元の飛鳥新社が2013年12月10日に公式サイトで見解を発表し、ネットの疑惑に真っ向から反論した。

   ところが見解には疑問点が少なくなく、ネットでは再びバッシングの嵐が巻き起こっている。飛鳥新社の担当者はJ-CASTニュースの取材に対し、発表文にない細かな点についても「合法」との主張を貫いたが、一方で「作者がどこまで写真を参考にしたかについて、現段階では分からない」とも答えている。

写真著作者「作者から謝罪メールをいただいた」

飛鳥新社が掲載した「見解」(画像は公式サイトのキャプチャ)
飛鳥新社が掲載した「見解」(画像は公式サイトのキャプチャ)

   「昆虫交尾図鑑」(12月7日発売)は虫たちの「愛の営み」をテーマにしたイラスト本で、東京藝術大学デザイン学科の現役生、長谷川笙子さんが手がけた。授業の課題として作成したのをきっかけに出版のチャンスを掴んだ。まさにシンデレラガール…となるはずだったのだが、「昆虫交尾図鑑」はわずか1日で「疑惑の本」と化してしまった。イラストとそっくりな写真が複数のサイトからいくつも見つかったのだ。

   インターネット上では、ただちに図鑑イラストの検証作業が進められた。当初はその完成度の高さから「トレース(複写)」とされていたが、検証の末、現在では「模写」との見方が濃厚になっている。仮に「模写」だとすると、写真家に無断で商用公表した場合は著作権(複製権)侵害にあたる可能性が高い。虫専門の図鑑サイト「虫ナビ」の運営者は、疑惑イラストの一つである表紙の「コーカサスオオカブトムシ」が自サイトの写真を模写したものだとみて、飛鳥新社に抗議メールを送ったとツイッターで報告している。

   複数のネットニュースも「模写疑惑」としてこれを報じ、騒動はさらに大きくなった。そんな中、虫ナビ運営者が「作者から謝罪メールを頂きました」と9日にツイートした。この報告によると、長谷川さんは、写真を見て描いたという点は認めているといい、印税などの権利の放棄、写真使用料の全額支払いなども申し出たという。ところが、翌日10日、今まで黙っていた飛鳥新社が公式サイトに「見解」を掲載したことで、沈静化しつつあった騒動に再び火がついた。出版社側の主張は「著作権を侵害するものではないと考えております」と疑惑に反論するものだった。

「表紙の昆虫については詳しく確認していない」

   飛鳥新社はネットで指摘されている類似性について「リアルに描いた場合に、写真における昆虫の特徴と類似するのは当然」「昆虫の交尾の姿に個性的体位がないのは自明」と異を唱える。また、描いた際の角度と撮影した際の「角度が違っている」ことを理由に「創作性における類似性は認められない」とも論じる。似ているのは当然で、写真を見たとしてもあくまで参考の範囲内ということなのだろう。なお、最後には「以上の弊社見解は、著作権に詳しい弁護士の検討を経たものです」とまで書かれている。

   この発表文は多くの反感を買ってしまったようで、ネットでは「本人は幕引きしたそうだったが出版社が燃料投げ込み」「すげーなー。作者守るきねえなー」「飛鳥から出てる本で問題がありそうなのを片っ端から漁るか」といった声が上がっている。

   「参考」と「模写」の区別は難しいが、原則として、いくつかの作品をみた上でオリジナルの作品を描いたのならば「参考」。ある作品を見ながら忠実に再現したものは「模写」となる。なお、今回の発表では触れられていなかったが、ネットでは、昆虫の姿や交尾の体位だけでなく、「光の反射具合」「サイズ」など細かな類似点が言及されている。特に表紙のカブトムシは個体差もかなりあるそうで、対になった2匹の姿形、サイズまで酷似することはほとんどないようだ。こうした点について飛鳥新社の担当者に質問したところ「発表のとおりです。弊社としては合法という認識を持っています」の一点張りだった。ただし、「表紙のカブトムシについては詳しく確認していない」そうで、ネットでの検証をしっかりと調べたわけではないようだ。

個人攻撃に憤っている

   次に、長谷川さんが写真を見て描いたことを認めている件について尋ねると、「写真は参考にしたようだが、模写というところまでいくのか、どこまで参考にしたかという部分については現段階では分かりません」と話す。それでは、事実確認が取れていない状態で「違法でない」と明言したのはなぜなのか。

   すると、担当者は「長谷川さんはネット上のバッシングで精神的に参っているようで、そうした部分を詳しく聞き出すのが難しい状況なんです」と打ち明け、発表の真意を語った。さらに「裁判で結果が出たわけでもないのに、ネット上では不特定多数による強烈な個人攻撃が行われている。本来関係のない長谷川さんの個人情報まで流出しています。当社としてはそうしたやり方を危惧している、というより憤っています」と語気を強め、「当社に矛先が向かうのは結構ですが、個人攻撃はやめてもらいたいです」と訴えた。

   なお、今後の対応については現段階では未定で、長谷川さんと話し合った上で決めていくことになるそうだ。

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