2024年 4月 27日 (土)

日の丸ロケットは生き残れるか 「後継機開発」「コスト削減」が課題

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   日本のロケット打ち上げを巡って明るいニュースが続いている。2013年8月~9月、大型のH2Bロケットと、小型ロケット「イプシロン」が相次いで打ち上げられた。H2Bは打ち上げ業務が宇宙航空研究開発機構(JAXA)から三菱重工業に移管されて初めての打ち上げを無事済ませ、イプシロンは新開発ロケットの初の打ち上げを成功させ、日本の技術力を示した。

   今年からはH2A、H2Bの後継ロケットの開発も始まる。ただ、日の丸ロケットの未来は順風満帆というわけではない。厳しい国際競争の中で、コストをいかに引き下げるかなど、生き残りへの課題は小さくない。

割高な打ち上げ費用

費用がネック(画像はJAXAの「イプシロンロケット」特設サイト)
費用がネック(画像はJAXAの「イプシロンロケット」特設サイト)

   H2ロケットの改良型として1996年から開発が始まったH2Aロケットは最大で衛星10トンまでを打ち上げられ、2001年の試験機(1号機)からこれまで22回打ち上げ、21回成功(成功率95.5%)。同じエンジンを使用するH2Bの4回を加えると26回中25回成功させている(同96.15%)。今年も5回程度の打ち上げが見込まれる。

   問題はコストだ。1回の打ち上げ費用は85億~120億円で、アリアンスペース(欧州)などの約80億円に比べて割高。さらに、半額程度の格安に挑む米ベンチャーもあるし、インド勢などの新興国の参入も見込まれる。

   そこで、政府の宇宙政策委員会は2013年5月、H2A後継の大型ロケット、通称H3ロケットの開発方針を打ち出した。2020年の運用開始を目指し、開発費1900億円を投じる計画で、2014年度予算で早速、70億円が盛り込まれた。打ち上げ費用50億円とH2Aから半減が目標だ。

   他方、イプシロンは、2006年を最後に引退したM5ロケットの後継機にあたり、技術的には、H2Aや各国のロケットは液体燃料が主流の中で、日本のロケット開発の父といわれる糸川英夫博士以来蓄積してきた日本独自の固体燃料技術を継承している。

   衛星1.2トンまで打ち上げられるので、H2Aよりかなり小ぶり。M5が打ち上げ費用の高さからお役御免になっただけに、イプシロンはコスト削減を大きな課題に開発された。

   部品を減らして組み立て時間を短縮したほか、H2Aの補助ロケットをイプシロンの1段目に転用し、2・3段目にはM5のエンジンを改良して使うなど既存技術も活用、さらにITを駆使してロケットに積み込んだ人工知能が打ち上げ前の点検を自動的にすることで大幅に省力化するなどにより、打ち上げ費用はM5の80億円から38億円へ半減を実現した。さらに2017年ごろには同クラスの世界の"相場"である30億円以下にするのが目標だ。

欧州、ロシア、米国と競う

   世界の商業衛星打ち上げ市場は欧州とロシア勢が中心だ。大型衛星では、世界で運用中の商業衛星の半分以上がアリアン社の打ち上げで、サービス力と実績を背景に「3年先まで受注済み」という。小型衛星では冷戦時代の大陸間弾道ミサイルを転用し、低価格が売り物のロシアが強い。

   日本のH2Aは外国衛星の打ち上げ実績が2012年の韓国の1基のみで、それも日本の衛星と相乗りで格安になったから実現した例外。イプシロンも、2号機は2015年度に地球周辺のプラズマ現象などの国産観測衛星を打ち上げる予定だが、3号機以降は未定と、いずれも心もとない。

   日本は、大型衛星はH2Aや後継のH3で、小型衛星はイプシロンで、打ち上げ受注を狙う。そのためには、実績で信頼性を高めつつ、コストを下げ、競争に勝たなければならない。「衛星の開発や運用も併せて請け負う"パッケー ジ"で売り込む体制の強化も必要」(関連業界関係者)との指摘もある。

   また、衛星自体の動向も、大型化と小型化の二つの潮流がせめぎ合い、先が読みにくい。通信・放送衛星などは長寿命化のため燃料やバッテリーを増やして大型化する傾向がある一方、燃料を使わずに電機で飛行するイオンエンジンにより重さを半分に減らす衛星の開発も進む。どちらが主流になるのか、どのような住み分けになるのか。その行方により、打ち上げるロケットへのニーズも大きく変わってくるだけに、今後の開発には柔軟性も必要と言えそうだ。

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