2024年 4月 28日 (日)

高橋洋一の自民党ウォッチ
佐村河内氏問題と大阪市長選の共通点 混乱の元は「マスコミの不勉強」だ

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   佐村河内守氏のゴーストライター問題が話題を集めている。同氏を持ち上げたのはマスコミであったが、マスコミがどのように騙されたのかは、とても興味深い。

   同氏とのインタビューを掲載しなかっただけで、騙されなかったと胸を張るメディアもあるが、報じてナンボだから、それではメディアの役割は果たせない。逆にマスコミでは、「自分が取材したとしても騙されていただろう」と平気でいう人が多い。そうした人に共通なのは、音楽を知らないということだ。

取材記者は、楽譜読めたのか?

   たしかに、障害者で被爆二世となると、それだけで深く立ち入ってはいけない雰囲気がある。それにクラシック音楽という、かなり専門的な分野になると、三重の防護壁に囲まれているような世界だろう。しかし、ある程度、音楽を知っていれば、ここまで騙されることはなかったはずだ。

   正直言えば、筆者の音楽技量・知識もたいしたことはない。ピアノも満足に弾けないし、大学で音楽部にいたといってもオーケストラ部に入るほどの実力はなかった。ただ、いくつかの楽器はでき、楽譜を初見でもなんとか弾ける。学生時代には耳コピ(聞いてコピー)で採譜もしていた。

   作曲を語る上で、記譜したり、ピアノを弾いたりするシーンは欠かせないと思うが、それらがないまま報じられたのは、取材する側に音楽知識がないからではないか。今回取材したマスコミで、筆者レベルで楽譜を読める人がどれだけいるのだろうか。

   こうした話は、政治報道の世界でもよく見られる。いきなり話題が飛ぶようだが、例えば、大阪市長選挙である。なぜ橋下市長が市長選をしようとしているのか、「法定協議会」とは何かという質問が、マスコミ関係者からよくくる。

都構想めぐる法律をきちんと読めば分かるのに…

   大阪都構想について、その是非論とその手続き論を分けて考える必要がある。是非論を政治的にいえば、議論を進めていくことは2011年11月の大阪府知事選・市長選のダブル選挙によって民意を得ているが、最終的にはこれから行われる予定の住民投票で決まる。手続き論は、大阪でのダブル選挙などを背景にして、2012年8月「大都市地域における特別区の設置に関する法律」が成立し、それに基づき進められている。具体的には、同法第4条第1項に基づき大阪府知事、大阪市長、大阪府議会議員9人、大阪市会議員9人をメンバーとする大阪府・大阪市特別区設置協議会(これが法定協議会)が作られ、そこで特別区設置協定書(これが設計書)が作成され、議会の承認後、住民投票に付される。

   ここでのポイントは、住民投票による直接決定である。住民投票があるのだから、その前段階の法定協議会は、賛否を述べる場ではなく、住民投票にかける案(設計図)を作るだけが役目だ。もし都構想そのものに反対するのであれば、都構想に賛成する人のやりたいように設計図を書かせて、住民投票で反対運動すればいい。ところが、今の法定協議会の何人かの議員は、反対運動のために設計図を書くのをサボタージュしているのだ。そのサボりで住民投票へ進めない。

   今回の大阪市長選はあくまで、こうしたサボり議員に対し民意を問い、都構想の賛否に向けた住民投票へ駒を進める選挙である。住民投票に代替する、都構想の賛否を問う選挙というわけではない。こうしたことは、「大都市地域における特別区の設置に関する法律」を読めばわかるのだが、マスコミはこの法律をきちんと読んでいないので、「選挙に意味ない」とか「カネがかかる」とか、まともな批判・報道ができない。この意味で、佐村河内氏問題と大阪市長選を通して、マスコミのリテラシーが欠けているのが、図らずもあらためて浮き彫りになった形だ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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