2024年 4月 19日 (金)

「コピペ疑惑」、いまだ「再現実験成功せず」… 「STAP論文」に疑問噴出、分子生物学会も憂慮

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   理化学研究所の発生・再生科学総合センター(神戸市)が新たな万能細胞、STAP細胞(刺激惹起性多機能獲得細胞)の存在を発表してから1か月。このところ論文をめぐって様々な疑問が噴出している。画像を使いまわしているように見えるとか、文章の一部がほかの論文と酷似している、など。中でも深刻なのはその後一度もSTAP細胞を作製する再現実験が成功していないことだ。

   小保方晴子研究ユニットリーダー(30)の発表のあと、「iPS細胞(人工多能性幹細胞)よりも作成が簡単」と受け止められていたただけに、このままでは研究の信ぴょう性すら疑われかねない事態だ。理研では詳細な作製手順を公開する準備を進めるなど対応に追われている。

塩化カリウムを意味する「KCl」が「KC1」に化ける

   論文で疑惑が指摘されているのは、「核型分析」と呼ばれる染色体の分析手法について触れた200単語程度の記述だ。この記述が、ドイツの研究者らが05年に米国の学会誌に発表した論文と酷似していた。それだけであれば、「たまたま分析手法が同じだった。よくある手法を採用しただけだ」といった主張が成り立つ可能性もある。だが、大きく2つの点で、さらに疑惑の目が向けられている。

   ひとつが、表記ミスだ。05年の論文では塩化カリウムを意味する「KCl」という記述が、14年の理研の論文では「KC1」。単語の最後が「l」(エル)から「1」(イチ)に変わり、意味のない単語になっている。また、05年の論文では「トリプシン-エチレンジアミン四酢酸」を表す「trypsin-ethylenediaminetetraacetic acid(EDTA)」という記述が、理研の論文ではethylenediaminetetraacetic acidが消えて「trypsin and EDTA (EDTA)」という記述になっている。これらの表記ミスをめぐっては、「コピペをしそこなったのでは」との指摘も出ている。

実験で使った機材は90年代後半~00年代前半に販売

   ふたつ目が、この部分の論文に用いた機材だ。いずれの論文でも、ライカ社の「DM RXA RF8」という機種の落射蛍光顕微鏡に、フォトメトリクス社の「Sensys」(センシス)と呼ばれる型のCCDカメラを接続して実験したと記されている。ところが、これらの顕微鏡やカメラは90年代後半~00年代前半に販売されていたもので、今では入手困難。フォトメトリクス社のウェブサイトには故障時の対応方法を記したページが残っているが、前提とされているOS(基本ソフト)はウィンドウズの「98/2000/ME/XP」というありさまだ。この中で一番新しいXPでも01年発売で、14年4月にはサポートを終了する。05年発表の論文執筆のための環境ならば妥当だとみられるが、「最先端の設備がそろっているはずの理研で、10年以上前の古い機器を使っているのはおかしい。本当に実験したのか」といった指摘まで出ている。

   もっとも、これらの記述は論文の根幹部分に関係する部分ではなく、業績に深刻な影響はないとみられている。それよりも深刻なのは、いまだに再現実験が成功していないことだ。理研の論文の共著者で、小保方さんの会見に同席していた若山照彦山梨大教授も、理研から山梨大に移籍してからはSTAP細胞を作製できていないという。

山中教授「広く普及するには再現性や互換性の検証が重要な課題」

   iPS細胞(人工多能性幹細胞)を開発した京都大学の山中伸弥教授は、2月12日付けで再現性の重要性を強調する文書をiPS細胞研究所のウェブサイトで公表している。その内容は

「iPS細胞に高い再現性と互換性があることは、この技術が世界中で急速に普及した原動力となりました」
「STAP幹細胞についても、広く普及するには再現性や互換性の検証が重要な課題になります」

といったもので、再現実験が成功しないことには、業績そのものの意義も問われかねない。

   すでに理研に対して速やかな対応を求める声があがっている。例えば日本分子生物学会は3月3日、大隅典子理事長名で声明を発表し、論文をめぐる様々な問題点が指摘されていることについて「大変憂慮しています」と表明。理研に対して「可能な限り迅速に状況の正確な報告について公表されるとともに、今後の規範となるような適切な対応を取って下さること」を要望した。

   理研はいま詳細な作製手順の公表に向けて作業を進めている。

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