2024年 4月 28日 (日)

サッポロが国税当局へ「反撃」 酒税115億円返還請求の背景 

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   サッポロビールは、2014年5月末まで第3のビールとして製造していた「極ZERO(ゴクゼロ)」をめぐり、追加納税した酒税115億円について国税当局に返還を求めた。社内検証で当時の製法や原料が第3のビールに当たると確認したためと説明するが、国税当局の対応が注目される。

   話の基礎知識として、ビール類ビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)の税をおさらいしておこう。

第3のビールに認められる条件はあまりに細かい

「極ZERO」騒動は新たな段階に(画像はサッポロビールのホームページより)
「極ZERO」騒動は新たな段階に(画像はサッポロビールのホームページより)

   税率は酒税法で定められており、350ミリリットル缶当たりで、ビールが77円、発泡酒(麦芽比率25%未満)は46.9円、第3のビールが28円。税率は麦芽比率など原料や製法に応じて決まるが、「第3のビールに認められる条件はあまりに細かい」(関係者)のが実情だという。

   さて、今回の問題の発端は、独自の新製法をめぐる見解の食い違いにあった。サッポロは2013年6月に開発に約4年かけた独自製法で、世界初のプリン体ゼロ、糖質ゼロをうたった極ZEROを税率が安い「第3のビール」として発売。消費者の健康志向、低価格志向にマッチし、予想を超えるヒット商品となった。

   ところが、2014年1月に国税当局から製法についての情報提供を求められた。第3のビールと認めるには独自製法に疑義があったためとみられるが、サッポロは「製品開発上の営業秘密」として詳細を語らず、「第3のビールに該当しなかった場合に(税金の追加など)お客様に迷惑をかける」と判断し、製造を中止した。また、第3のビールでなかったと「確定」した場合の追徴課税も想定し、それまでの販売分について、適用税率を350ミリリットル缶当たり28円から77円として計算し直し、発売からの差額分115億円と延滞税1億円を追加納税した。そして製法を一部見直し、2014年7月に税率の高い「発泡酒」として再発売した。

最終損益を50億円の黒字から20億円の赤字に修正

   ここで終われば、こわもての国税当局に業者が屈するという、毎度の構図だが、今回、サッポロが「返還請求」という思わぬ反撃に出て、世間の注目を集めたというわけだ。

   この背景には、今回の追徴が、サッポロの経営に大きな影響を与えたことがある。持ち株会社のサッポロホールディングスは2014年12月期連結決算見通しで最終損益を50億円の黒字から20億円の赤字に修正した。これは2月上旬に収益改善などで3億円の黒字に改めて修正されたが、当初の赤字修正は業界に「利益が吹き飛んでしまう」と衝撃を与えたのは記憶に新しい。

   今回の返還請求が「民間企業VS国税当局」という分かりやすい構図とあって、ネット上では「サッポロの反撃か。がんばれ」「国は企業の邪魔ばかり」などとサッポロを応援するコメントが並ぶ。その一方、「税率に差をつけすぎて何がビールか分からんようになった」「税率が低く、ビール以外ばかりが開発されてないか」といった酒税の問題点を指摘するコメントも散見される。

   2014年のビール類の課税済み出荷量は10年連続の前年割れを記録し、市場縮小に歯止めがかからなかった。唯一売れ続けていた第3のビールも初めて前年比マイナスへと転落。政府はビール類の税率見直しを目指しており、海外からは日本のビール市場に対する改革圧力も強まっている。

   国税当局は当時の極ZEROの製法や原料について調査するものとみられるが、その結果によってはサッポロが新たなアクションを起こす可能性もあり、今後の展開が注目される。

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