2024年 4月 28日 (日)

気温上昇を見込んで現実的な対応を 被害に備える「温暖化適応計画」に注目

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   地球の温暖化を防ぐため、いかに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出を抑えるか、国際的な交渉が注目される一方、ある程度の気温上昇を見込んで被害への備えも必要だとされる。

   温暖化を阻止できればいいが、南太平洋のサイクロン被害のように、現実に影響が出る以上、被害を防ぐ、あるいは最小限に抑えるという現実的な対応が求められているからだ。これを「適応」といい、日本は今年夏をめどに、初の「適応計画」の検討を進めているが、世界的には計画を策定済みの国も多く、出遅れている。

  • 温暖化による健康被害、経済被害は深刻(画像はイメージ)
    温暖化による健康被害、経済被害は深刻(画像はイメージ)
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気温上昇を「2度未満」に抑えるのは困難

   2015年末に第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)がパリで開かれ、すべての国が参加する2020年以降の新たな枠組みの合意を目指しており、途上国を含む各国はそれぞれの削減目標を提出することが求められている。2014年末のCOP20では、この目標に「適応計画」も含めることが決まり、関心が高まっている。

   なぜ適応計画が必要なのか。その背景には産業革命以前からの気温上昇を「2度未満」に抑えるという国際的な目標の難しさがあり、欧州連合(EU)や米国、中国が新枠組みに向けて打ち出している温室効果ガスの削減目標を達成しても、2度未満の上昇に抑えるのは難しいと、多くの研究機関は分析する。国連環境計(UNEP)がCOP20に提出した報告書では、温暖化による洪水や干ばつ、海面上昇といった被害を抑えるための適応の費用が、2050年には途上国全体で年間2500億~5000億ドル(約30兆~60兆円)に達する可能性があるなどとしている。

熱中症など暑さによる死亡リスクは今世紀末に約2~4倍に

   日本でも環境省は2014年6月、温暖化に有効な対策を取らないと今世紀末には全国の年平均気温が現在に比べ4.4度上昇し、最高気温が30度を超える真夏日が全国平均で年間52.6日増えるなどとした予測をまとめた。さらに3月2日には専門家の協力を得て、温暖化の「影響評価報告書」をまとめた。7分野56項目について現状と将来の影響を評価し、「重大性」「緊急性」「確信度(起こりうる可能性)」を分析。対策に優先順位をつけた。このうち、熱中症やコメの品質低下、洪水被害など9項目は発生する可能性が高く影響が重大として、優先度が特に高いと指摘している。

   具体的には、例えば、▽熱中症など暑さによる死亡リスクは今世紀末に約2~4倍に跳ね上がる▽コメは気温上昇で全国的に品質が低下し、現在から3度以上気温が上昇すると北日本を除き収穫量が減り、九州で1等米の比率が約4割ダウン▽2060年代には温州ミカンは主力産地の多くで栽培しにくくなる▽ブドウやモモは高温による生育障害が発生▽代表的な河川で洪水を起こすような大雨が増加する――などの警告が並ぶ。

   欧米各国では、オランダが2007年に適応計画を公表、米国は2013年に今後の適応策の取組の方向性を示した大統領令を出した。独仏もそれぞれ2012年に「国家気候変動適応計画」「適応戦略行動計画」を策定。アジアでも韓国が2010年に適応計画を公表している。

日本は15年夏をメドに、初の適応計画策定

   中でも進んでいるとされるのが英国で、気候変動法に基づき、2013年に「国家適応プログラム」を策定し、約100のリスクを抽出して「洪水や海岸侵食の脅威を減らす」「厳しい気象現象に関連した死亡や病気のリスクを減らす」といった31の目標を立てて具体的な施策を打ち出しているという。

   日本は15年夏をメドに、初の適応計画策定に向け、政府が「影響評価報告書」をベースに検討を進めている。例えば国土交通省は2月下旬、水災害分野の適応策の方向性をまとめている。それによると、国が管理する1級河川では「100~200年に1度」の規模の洪水を想定するが、例えば利根川では「30~40年に1度」の洪水しか耐えられないため、今後30年間で「70~80年に1度」の規模の洪水まで対応できるようにする、といった考えを示している。自治体レベルの独自の計画づくりも進んでいて、災害に対する警戒情報の提供体制整備や、高温に適したイネの品種導入などに取り組むケースもある。

   インフラの老朽化なども考えると、防災力を維持するための投資が必要なのはもちろんだが、東日本大震災の復興で巨大堤防の是非を巡る議論が絶えないように、ハコモノ頼みの限界が言われながら、「温暖化対策を大義名分にインフラ整備をプッシュしようという族議員などの動き」(財務省筋)も指摘される。省庁間の財源の奪い合いになりかねないだけに、縦割りを排し、体系的に取り組むことが求められる。

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