2024年 4月 20日 (土)

国立大学から文系がなくなる? 文科省の揺さぶりに地方大学が浮足立っている

   文部科学省が全国86の国立大学に対し、人文社会科学系の学部と大学院について廃止や他分野への転換など大規模な組織改編を行うよう求めていることが波紋を広げている。

   将来的には国立大から文系学部が消えてしまう可能性さえ指摘され、国立大側の文科省方針への反発は強い。ただ、一部の大学は既に文科省の意向に沿う形で文系学部の定員を減らす計画を打ち出すなどの動きもあり、国立大の文系学部の行方は混とんとしている。

  • 文系学部の未来やいかに(画像はイメージ)
    文系学部の未来やいかに(画像はイメージ)
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文科省が交付金配分権を握る

   文科省は2015年6月初旬、国立大に対し、「社会が必要としている人材の育成や地域への貢献を進めてほしい」として、文学部や法学部などの文系学部のほか、教員養成系学部などについて徹底的に見直すよう通知した。少子化が急速に進み、国際競争が激しくなる中、文系学部は理系学部のように「技術革新」に直結せず、将来に向けた目に見える成果がすぐには期待しにくい。さらに、国の財政難から税金を効率的に使いたいという政府側の狙いがあるとみられている。

   これに対し、国立大側から反発の声が沸き起こった。国立大学協会の里見進会長(東北大学長)は6月中旬に東京都内で開いた記者会見で、「非常に短期の成果を上げる方向に性急になりすぎていないか。大学は今すぐ役に立たなくても、将来大きく展開できる人材をつくることも必要」と述べ、文系学部の必要性を訴えた。実際のところ、大企業の経営者や官僚の多くは法学部や経済学部の出身者だし、ネット業界では文系の起業家も少なくない。

   京都大の山極寿一総長も、「幅広い教養と専門知識を備えた人材を育てるためには人文社会系を失ってはならない。(下村博文文科相が要請した)国旗掲揚と国歌斉唱なども含め、大学の自治と学問の自由を守ることを前提に考える」(6月16日の会見)と、強く批判している。

   ただし、「大学の自治」と言っても、文科省は国立大向けの交付金について、取り組みや実績で評価が高い大学に対して重点的に配分する方針を示している。交付金配分で「制裁」や「与奪」の権を握る文科省に、真っ向から対抗するには容易ではない。特に、ブランド力に乏しい地方の大学は厳しいところだ。

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