2024年 5月 20日 (月)

【女の相談室】「電気が体に!」女性用バイアグラは「気持ち」を開放

   「まるで電気スイッチが入ったかのようだった!」。米紙ワシントン・ポストは、薬の治験に参加した女性たちの感激の言葉をそう伝えている――。米食品医薬局(FDA)は2015年8月18日、「女性用バイアグラ」と呼ばれる女性の性欲を高める効果のある薬剤「フリバンセリン」を認可した。

   薬の承認をめぐっては女性団体の間でも賛否が分かれ、3度目の正直での認可となった「フリバンセリン」だが、いったいどんな薬なのか? 性に悩む女性たちの救世主となるのか? 日本での認可の行方は?

  • いつまでも性を謳歌したい(写真はイメージ)
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「結婚生活さえ危うくなっていたのに...」

   もともとフリバンセリンは、抗うつ剤として開発されたものだ。抗うつ剤としての効果が今ひとつだったが、ドーパミンやノルエピネフリンという性欲を高める神経伝達物質の分泌を促すと同時に、性欲を減退させるセロトニンの分泌を抑える効果があることがわかった。そこで、女性の性欲を回復する治療薬に衣替えをしてFDAに申請されてきた経緯がある。

   男性用バイアグラとの決定的違いは、バイアグラがペニスの海綿体への血流を良くして物理的に勃起を促すのに対して、フリバンセリンは、ある種の「抗うつ剤」であり、性に対する消極的な気持ちを開放して性欲を高めることだ。つまり、男性用はペニスに直接作用するため、効果は形にすぐ表れるが、フリバンセリンは脳に作用するため、効果は気持ちに表れる。このため効果を確認しにくい点は否めない。

   性欲の強弱は個人差があるし、臨床試験でも効果が表れたのは服用開始から4週間後~8週間後。また、満足を得た性行為の回数は月に平均4.4回で、服用前に比べて1.7回ほど増えた程度だ。劇的な効果ではない。この点も過去2回、認可が見送られた理由の1つだ。それでも、性欲がわかずセックスができなかった女性にとっては朗報で、「結婚生活さえ危うくなっていたのに、夫との夜の営みが復活して電気が体に流れたようです」と冒頭の女性は語っている。

「媚薬のようにウズく」は誤解、性に興味のない人にも効かない

   男性用バイアグラが必要に応じて飲むのに比べ、フリバンセリンは毎日飲む。どういう人に効果があるのか。当初は、飲めば媚薬のように体がウズき出す薬と誤解されて、女性団体の間から「デートレイプに悪用される」という声もあった。製薬会社のファーマシューティカルズ社は「フリバンセリンは遅効性で、眠気を感じることはあっても、正体を失うようなことはない」と説明する。また、米の専門医はこう説明している。

   「媚薬ではありません。不感症やセックスレス、性欲低下がうつなどのメンタルな面の不調からきている人に有効なのです。セックスをしたいのに、その気になれない人が対象で、もともと性に無関心な人が飲んでも効果はありません。また、普通に性欲がある女性が飲んでも変わりはありません」。

   では、どういう人が飲むといいのか。女性はホルモンの関係で閉経前に性欲が減退する。これまでセックスを謳歌してきた熟年カップルが、女性の加齢とともに楽しめなくなったケースなどに有効だという。

日本での認可はどうなる?

   ただ、副作用も指摘されている。とくにアルコールと一緒に服用すると、失神やめまい、極度の低血圧を招くおそれがある。だから、保健衛生関係の女性団体は認可に反対してきた。しかし、「男性にバイアグラがあるのに、なぜ女性にはないのか。女性はセックスを楽しむ権利はないのか。ジェンダーバイアス(性的偏見)ではないのか」という女性団体の声に押されて、FDAの諮問委は18対6票の賛成で認可を認めた。

   日本での認可はどうなるのだろうか。日本の女性産婦人科医はサイトの中でこう語っている。

「日本国内での治験も必要だから、早くても5年はかかるでしょう。もし、日本で買えるようになったら、熟年世代の女性の性欲はどんどん花開くかもしれません。妊娠の恐れがないから、一番性を謳歌できる存在になるでしょうネ。若い男性諸君、年上女性とのお付き合い、頑張って!」
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