2024年 5月 6日 (月)

ポジティブな人ほど長生きできないってホント?

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   「この間、新聞でのう~、『ポジティブな人は早く死ぬ?』っちゅう記事を読んだんやけど、ホンマかいの? ワシ、若い頃から豪気モンでのう~、コンマイ(細かい)ことにクヨクヨせんのが取り柄なんや。ワシのようなポジチブな男が長生きするはずやないの?」「お爺ちゃん、そんな記事を気にしてちっともポジティブやあらへん。せやから大丈夫、長生きしはるわ~」。

   従来は、「明るく前向きで楽天的な人ほど長生きする」といわれてきたが、そんな医学界の「常識」を覆す研究成果が出ているのは確かだ。2011年に発表された「ターマン&フリードマン研究」である。「『真面目』な人ほど長生きをして、『陽気で明るい』人ほど短命である」ということを立証した。この研究のすごいところは、延べ80年間という長期間にわたって対象の人々の人生を追跡し、「性格と寿命の関係」を調べた点だ。

  • パワフルおじいちゃん、スーパーおばあちゃん、凄すぎ(イラスト:サカタルージ)
    パワフルおじいちゃん、スーパーおばあちゃん、凄すぎ(イラスト:サカタルージ)
  • パワフルおじいちゃん、スーパーおばあちゃん、凄すぎ(イラスト:サカタルージ)

「まあ大丈夫だろう」と甘く考えて早死にする楽天家

   調査が始まったのは1921年。米スタンフォード大のルイス・ターマン教授は、当時10歳前後の子供約1500人を対象に性格を分析、その後の人生を5~10年おきにインタビューする形で追跡調査した。子供たちがどの程度の割合で「陽気で楽天的」「真面目」「人気者」「神経質」「ルールを守る」などを持っているかを診断し性格分類の目安にした。しかし、途中でターマン教授が死去。約30年のブランクの後、カリフォルニア大学のハワード・フリードマン教授が研究を引き継ぎ、2011年に『ロングエビティ・プロジェクト(長寿計画)』という医学ノンフィクションにまとめた。

   その結果わかったのは、「conscientious」指数の高い人ほど一番長生きをしたことだ。「conscientious」とは日本語で「良心的」「誠実」「慎重」「根気強い」などをいい、いわゆる「真面目」という意味だ。逆に、「conscientious」指数の低い、「真面目さに欠ける」人々ほど早死にした。10歳時の性格診断では「陽気で楽天的」「社交的で人気者」だった人々だ。この結果について、日本の専門家はサイトの中で、「真面目で神経質な人は、一生懸命になりすぎてストレスをため込みやすく、心臓病などを誘発して長生きできないといわれてきたので、驚きです」と語っている。

   フリードマン教授はこう説明している。「『明るく楽観主義』の人は、『まあ大丈夫だろう』という慎重さに欠ける判断を人生のあらゆる場面でしていました。その積み重ねが不健康な生活習慣になったり、交通事故を起こしたりしました。また、『社交的な人気者』は、人付き合いのためのアルコールやタバコを過剰にとり、早死につがった人が多かった。一方、『真面目』な人は、成人後も堅実な生活を送ったので生活習慣病にかかる人が少なく、人生の様々な辛い局面でも粘り強く乗り越えています」。

100歳長寿の男性の性格は「飄々」、女性は「一家の主」タイプ

   長生きと性格は関係があるのだろうか。2000年に慶応大と東京都健康長寿医療センターが、合同で都内の100歳前後の長寿者(百寿者)を調べた研究がある。約300人に直接会ってインタビューをして性格も調査した。その結果は、「ターマン&フリードマン研究」とはまったく逆で、研究チームの1人はサイトの中でこう語っている。「百寿者の方たちは、皆さんとにかくポジティブ。寝たきりの人でも驚くほど気持ちが前向きで明るい。『布団の中でつまらなくないか』と聞くと、『自分が若い頃に作った歌を歌ったり、昔のことを思い返したり、少しも退屈じゃないよ』と答えてくれました」。

   そして、百寿者に共通する性格をこうまとめている。「男性は、飄々としたマイペースタイプで、凝り性でコレクションなどを好む。女性は、一家の中心的な人物で、家族の世話を一生懸命することに生きがいを感じるタイプ」。

   いったいどっちが正しいのだろうか。そもそも、長寿者の共通性を探ろうとすることに無理があるのだろうか。公益財団法人・長寿科学振興財団のサイトでは、冒頭にこう書かれていた。「百寿者の最大の共通点は、ただ100歳であることだけです。加齢に伴い個々の人の違いが際だってきます。100歳になるとこの違いがとても大きくなるようです。それでも、ある程度共通点はあります。幸福感が高く、自分の人生を肯定的にとらえるポジティブシンキングの人が多いことです」。皆さん、個性が激しいということなのだろう。

徹マン、タバコ、お酒毎晩2合の「トンデモ長生き」の謎

   そういえば、前述の慶応大と都健康長寿医療センターの合同調査では、こんなに無茶をしている「トンデモ百寿者」の例も報告されている。「夜型で毎晩午前3時まで編み物をして4時間しか寝ない女性(101歳)」「週1回ほど徹マン(徹夜麻雀)をする男性(94歳)」「タバコを1日に15本吸う男性(102歳)」「毎晩塩辛をサカナに日本酒を2合飲む女性(98歳)」「主食がチョコレートとブラックコーヒーの男性(97歳)」などなどだ。

   老年学が専門家の1人はサイトの中で「100歳の方にはパラドックスがある」と指摘している。100歳になるには、よほど健康な遺伝子を親から引き継いだとみるのが普通だが、長寿に不利に働く遺伝子を持っている人が多いというのだ。それなのになぜ長生きできているのか。長寿者の謎は奥が深い。性格や食生活の面だけではなく、遺伝子の面からも調べる研究が進んでいる。

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