「疲れたなこぼせる場所も消えていく」――川柳投稿アプリ「ごーしちご」のサービス終了が、運営するサイバーエージェントから発表され、ユーザーが様々な思いのこもった「一句」を寄せている。「ごしち民」の愛称で呼ばれるユーザーは、ツイッターや掲示板サイトにはない「ごーしちご」の平和で穏やかな雰囲気を愛してきた。「いつまでもここに居たいとためらいて」それは突然の知らせだった。2015年11月9日、16年1月5日をもってサービスを終了する、という運営からのメールが「ごーしちご」ユーザーに届いた。「気軽な川柳、ごーしちごのリズム感の楽しさ、これから時々でも思い出していただけたら」というスタッフの言葉や「またいつかどこかで会えると願ってます」という一句が綴られた一方、終了を決定した理由には触れていない。14年8月19日(はいくの日)にサービスを開始してからおよそ1年。当初は、利用者100万人を目指すとしていたが、早くも終わりを迎えることとなった。「ごーしちご」は、ユーザー同士が川柳を投稿し合うSNSだ。日常のたわいもない出来事から社会問題まで、取り扱うテーマは幅広く、ユーザーはまるでツイッターやフェイスブックに投稿するように感想や意見を一句にしたためて投げ込む。心を揺さぶられた句に押されるのは、フェイスブックの「いいね!」に対応する「いとおかし」ボタン。「いとおかし」が多い句のランキングもリアルタイムで更新される。老若男女が日々の悩みや喜怒哀楽を手軽に表現でき、論争も「炎上」も起こらない。「ごーしちご」には、そんな独特のゆるさと穏やかな雰囲気があった。ユーザーの1人はJ-CASTニュースの取材に対し、「川柳という形式上、いわゆる『荒らし』などは極めて少ないです」と説明する。それだけに、今回のサービス終了発表には他のユーザーも複雑な心境を見せる。アプリには早速「このままでそっとさよならそれもいい」「疲れたなこぼせる場所も消えていく」「こっそりと本音が言えたありがとう」「いつまでもここに居たいとためらいて」といった静かな反応の句が多く寄せられている。一方で、存続運動を始めるコアユーザーもおり、同じサイバーエージェントの提供するサービス「Ameba」の中に早速「『ごーしちご』存続を願う会」というコミュニティが生まれている。一部ユーザーは「存続を願う会」で活動開始一体、終了の理由は何なのか。サイバーエージェントの担当者は取材に対し、「事業の選択と集中です。ユーザー様が多い中での決断で心苦しくはありますが、収益性を考慮して撤退を決めました」と明かす。サービスを開始してわずか1年での「終了宣言」は早いのではないか。そんな質問には「伸びている事業に投資を集中させる戦略をとっており、珍しいことではありません。もちろんすべてのサービスが1年でクローズするわけではありませんが」と語った。なお、運営スタッフによる公式ブログも2015年3月を最後に更新が途絶えているが、「今回の(サービス終了)発表とはまた別の話」(担当者)という。前出のユーザーはサービス終了発表について「経緯も理由の説明もなく、ずいぶんと一方的なものと感じました。そもそもこの約1年の間、全く運営サイドの動きが見られず、音信も途絶えて放置されていた状態だったので、随分いい加減な体質の会社だと思いました。最初の1年はしつこいくらいイペントや告知がなされていたので、余計そう感じます」と怒りをあらわにする。ちなみにセガも13年7月、俳句をテーマにしたアプリ「うた詠み♪」をリリースしている。美少女キャラクターが自分の作った俳句を詠むiOSアプリだが、こちらも14年5月19日に終了した。
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