2019年 9月 19日 (木)

ハエのメスは「いい男」を選び 失恋したオスはヤケ酒に走る

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   ハエのメスは「精液の質」でオスを選ぶかと思えば、オスはメスに振られるとヤケ酒に走る!?――ハエって意外にナイーブで高尚なヤツだという研究が相次いで発表されている。

   これからは、むやみにハエ叩きなど使えなくなりそうだ。

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ハエのメスは「精液の質」で交尾相手を選ぶ?

   ハエの世界では、メスはオスの「精液の質」で交尾相手を選んでいるという仮説を提唱したのは、豪州ニューサウスウェールズ大学のラッセル・ポンドリアンスキー教授のチーム。生物学誌「Trends in Ecology and Evolution」の2016年3月3日号に発表した。

   それによると、ナガズヤセバエ科のハエを対象に平均的な体長のメスの集団と、大柄のオスの集団、小柄なオスの集団をそれぞれ交尾させ、生まれる子のサイズを調べた。当然、親(オス)のサイズと相関関係があると予想したが、見事にはずれバラバラだった。

   データを分析、様々な検討を加えた結果、唯一説明できる要因は、「メスは処女ではなく、以前にも交尾していた」ということだ。メスの生殖器官に以前の交尾相手の精液が残っており、その中に含まれる物質が新しい交尾相手の精子に影響を与えているのでは、というわけだ。

   精液は、精子とそれをのぞいた液体の精漿(せいしょう)に分かれる。科学者の関心は精子にばかり向けられるが、ポンドリアンスキー教授は精漿に注目した。精漿は、RNA(リボ核酸)とタンパク質が混じった化学物質のスープだ。この化学物質がメスの生殖器官の環境を整え、受精の確率を高めたり、受精卵がより健康な子に育つよう促したりしている。そして次のオスとの間にできた子の成長にまで影響を与えている、という仮説を立てた。現在、その証拠を集めている段階だ。

   ポンドリアンスキー教授は「精漿の組成を調べると、同じ種のオスの間でもずいぶんばらつきがあります。だからメスが、精液(精漿)の質で相手を選んでいる可能性は十分あります。メスがどうやってそれを見極めているか、現在、精漿のどの成分がメスに受け入れられているか研究中です」と語っている。

人間のアルコール依存と同じオスの「傷心」

   一方、メスに交尾を拒絶されたオスは、悲しみを紛らわすためにヤケ酒に浸るという研究をまとめたのは、米カリフォルニア大学のウルリケ・ヘーベルライン教授のチームだ。科学誌「Science」の2012年3月15日号に発表した。

   ショウジョウバエのオスを、交尾経験のあるメスと未経験のメスの容器にそれぞれ入れて観察した。すると、未経験のメスはオスの求愛を受け入れて交尾したが、経験のあるメスは一定期間オスに興味を示さず、受け入れなかった。交尾を拒絶されたオスを今度は未経験のメスと一緒にさせると、ショックから立ち直れないのか、求愛行動をしなかったという。

   そこで、拒絶されたオスたちを、いったんメスから隔離し、濃度15%のアルコールを含むエサと、通常のエサの両方を置いた容器に入れたところ、オスたちはアルコール入りのエサを浴びるように食べ始めた。

   振られたオスたちの脳内を調べると、神経伝達物質の「ニューロペプチドF」が減少していることがわかった。一方、メスと交尾し性欲を満たしたオスの脳内では「ニューロペプチドF」のレベルが高かった。研究チームは、「ニューロペプチドF」の減少がアルコールへの衝動を招いたと考えている。

   実は、人間の脳内にもよく似た神経伝達物質「ニューロペプチドY」が存在し、これが不足するとアルコール依存症や薬物中毒になることがわかっている。人間の「ニューロペプチドY」は、不安やストレスにさらされると減少する。ハエのオスが振られてヤケ酒に走るメカニズムは、人間のアルコール依存症とまったく同じだった。

   ヘーベルライン教授は「今回の研究は、人間のアルコール依存症の研究にも役立つと思います」と語っている。

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