2024年 4月 29日 (月)

羽田「低空ルート」への住民不安 「航空機からの落下物」の現状

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   羽田空港へ都心の低空を飛ぶ新ルートの運用が2020年春に始まり、東京五輪・パラリンピックに向けて国際線の発着回数が現在の1.4倍に拡大する見通しになった。都市間競争を勝ち抜くため大きな力になると期待され、経済効果は6500億円にのぼるとの試算がある一方、騒音などへの不安も根強く、騒音軽減の地道な取り組みを重ねるとともに、住民への丁寧な説明が求められる。

   羽田空港への着陸は現在、東京湾上空を通り東か南側から進入するルートを採用しているが、新ルートは、南風の時に都心上空から侵入して着陸、東京湾に向かって出発するようにする。北風の時は東京湾から着陸する。運用は国際線が混雑する15~19時に限定するが、滑走路を効率的に使えるようになり、1時間に最大44機が飛び、1時間あたりの発着回数は現在の80回から最大90回になり、年間発着枠は現在の45万回から49万回に増える。国交省は増加分を国際線に割り振る方針で、国際線発着枠は年間で最大3.9万回増えて12.9万回へと1.43倍に、昼間に限ると6万回から9.9万回に、1.65倍に増える。

  • 2020年春から「低空ルート」を運用する(画像はイメージ)
    2020年春から「低空ルート」を運用する(画像はイメージ)
  • 2020年春から「低空ルート」を運用する(画像はイメージ)

年間の経済波及効果は6503億円と試算

   国交省は2016年7月28日に都や特別区長会、埼玉県など自治体との協議会を開き、住民が懸念する騒音や安全への対応策として、当初案より飛行高度を上げたり、静かな飛行機を増やしたりすることなどを提示、東京都や埼玉県など関係自治体は対応策を評価した。国交省は2017年度予算から、飛行経路の変更に必要な誘導路や航空保安施設の整備などの経費を盛り込む。工事には約3年が必要で、東京五輪に間に合わせる考えだ。

   都心に近く、地方空港とのネットワークも充実している羽田の発着枠が増えると、都内から海外旅行や海外出張へ、あるいは海外から日本への旅行など格段に利便性が増す。

   特に政府は日本への訪日外国人旅行客(2015年に1974万人)を2020年までに4000万人に増やす目標を掲げていて、羽田の容量拡大はその条件整備の大きな一歩になる。国交省は、今回の枠拡大で国際線の旅客が705万人(うち外国人294万人)増えて現在の1.5倍の1964万人になり、その年間の経済波及効果(生産額の増加)は6503億円、税収は532億円増え、4万7295人の雇用増加が見込まれると試算している。

   経済的に期待の大きい羽田の枠拡大だが、都心の低空ルートだけに、騒音などへの不安は根強い。具体的には、東京23区を北西から南東方向に縦断し、段階的に降下して渋谷、港、目黒、品川各区では東京スカイツリー(高さ634メートル)より低く飛び、空港に近い品川区などでは東京タワー(333メートル)より低い高度で着陸態勢にはいる。1時間当たり最大44機が通るということは、81秒に1回の計算。騒音は空港から6キロ離れた品川区・大井町駅付近で最大80デシベル(地下鉄車内並み)、12キロの渋谷区内で最大68~74デシベル(バスの車内並み)になるという。

騒音対策と防音工事助成

   国交省は、騒音レベルが一定の基準を超える学校や病院などには防音工事の費用を助成する。また、羽田の国際線の着陸料を見直して、航空機の重量に加え騒音の要素も組み合わせた料金体系とし、ボーイングB787やエアバスA350といった低騒音機の導入を促す方針だが、住民の間には一般家庭にも二重窓化などの助成を求める声もある。

   安全面の心配もある。千葉県によると、成田空港の周辺では氷塊や部品など、航空機からの落下物が過去10年で21件確認され、民家の屋根に落下した事例もある。国交省は航空会社に対して点検・整備の徹底を指導するなど、落下物の未然防止に万全を期すとしているが、住民の不安はつきない。

   「羽田増便による都心低空飛行計画に反対する東京連絡会」など市民団体からは「数百万人が影響を受けるのに計画を知らされていない人も多い」と不満の声が出ており、関係自治体も国に「丁寧な説明」を求めている。

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