安倍晋三首相の真珠湾訪問を主要紙が「現職として初」などと報じる中、外務省の川村泰久外務報道官は2016年12月7日の記者会見で、「現職の総理大臣として、アリゾナ記念館で慰霊を行うのは初めて」と述べた。初めてかどうかの確認を求める記者の質問に対して、「アリゾナ記念館で」という条件付きで「現職として初めて」だと強調したかっこう。実際には1951年に吉田茂首相(当時)がサンフランシスコ講和条約の調印式の帰路にハワイ・ホノルルを訪問しており、当時の新聞では真珠湾を訪問したと報じるものもあった。「アリゾナ記念館で慰霊を行うのは」という条件付きで「現職初」安倍首相の真珠湾訪問決定をめぐっては、共同通信が12月5日夜に「現職首相の真珠湾訪問は初めて」NHKも同日夜のニュースで「現職の総理大臣が真珠湾を訪れて犠牲者を慰霊するのは初めて」と報じ、各紙の12月6日朝刊(東京本社最終版)の1面でも「初めて」という表現が続いた。朝日新聞は「首相真珠湾訪問へ」「今月27日現職として初」の見出しとともに「日本の現職首相が真珠湾を訪れるのは初めて」と報じ、他社も「現職首相で初」「現職首相の真珠湾訪問は初めて」(日経新聞)「現職の首相の真珠湾訪問は初めて」(産経新聞)「26、27日現職で初」「日本の首相が真珠湾で犠牲者を慰霊するのは初めて」(毎日新聞)などと報じた。だが、川村氏は会見で、「日本の現職の総理としては、慰霊での真珠湾訪問は初めてなどと言われているが,どこが初めてということなのか」と確認を求める朝日新聞記者の質問に対して「現職の総理大臣として、アリゾナ記念館で慰霊を行うのは初めてでだと認識している」と答え、「アリゾナ記念館で慰霊を行うのは」という条件付きでの「初めて」だとの見方を示した。当時の読売新聞「吉田さん、真珠湾訪問」の見出し吉田氏のホノルル訪問については「真珠湾を訪問したか、更に慰霊を行われたかどうかということは、現時点で明確になっていない」と述べ、後に外務省ウェブサイトの会見録には「国立太平洋記念墓地で戦没者の慰霊を行っています。なお、真珠湾での公式行事については確認されていません。当時は、アリゾナ記念館は建設されておらず、アリゾナ記念館において現職首相が慰霊を行うのは今回が初めてとなります」という説明が追記された。外務省と同様の質問が12月8日夕方の菅義偉官房長官の定例会見でも出た。共同通信の記者が「真珠湾については初めてかは確認できないということか」と念を押したのに対して、菅氏は「真珠湾は範囲が広いものですから、訪問したかどうかは確認できていない」と答えた。真珠湾訪問については確認できない、というのが政府見解だが、1951年9月13日付の読売新聞夕刊では、「吉田さん、真珠湾訪問」の見出しで、「ラドフォード中将を真珠湾に訪ねた時は感慨深げだった」と報じている。ただ、この記事からは吉田氏が真珠湾で「慰霊」したかは明らかではない。国立太平洋記念墓地と真珠湾のアリゾナ記念館は15キロほど離れた場所にある。読売新聞は、今回の安倍首相の真珠湾訪問について「日本の首相が米大統領とともに真珠湾を訪れるのは初めて」と報じている。この問題は、「バズフィードニュース」(BuzzFeedNews)が12月8日早朝に大々的に報じた。これを受け、J-CASTニュースは、当時の新聞報道を確認の上、12月6、7両日に配信した関連記事2本から「現職首相としては初めて」といった表現を削除した。
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