米ロサンゼルス郊外のビバリーヒルズで2017年1月8日(米太平洋時間)に行われた第74回ゴールデン・グローブ賞の授賞式で、女優のメリル・ストリープさん(67)がドナルド・トランプ次期大統領を念頭に、「軽蔑は軽蔑を呼び、暴力は暴力を呼ぶ」などと批判した。トランプ氏が大統領選期間中、障害のある記者の動作を揶揄(やゆ)したとされることに対する批判だが、トランプ氏はツイッターでストリープさんについて「ハリウッドで最も過大評価された女優」「ヒラリーの追随者」と罵倒し、記者についても「こびへつらう様子」を表しただけだ、などと反撃している。「映画ではなく、現実の光景」ストリープさんは、長年にわたって映画界に貢献した人に贈られる「セシル・B・デミル賞」を受賞。その受賞スピーチの冒頭、「ハリウッドには、よそ者と外国人がうようよしている。彼らをみんな追い出したら、あとはアメフトと総合格闘技ぐらいしか見るものはない」などとトランプ氏の排外主義を皮肉った。ストリープさんにとって「この1年で、非常にショックをうけた一つのパフォーマンス」があり、それはストリープさんの心に「フック(釣り針)が刺さったまま」だという。トランプ氏を名指しこそしないものの、その内容を「我が国で最も尊敬される座に就こうとする人が、障害を持つ記者の物まねをしたときのことです」「それを見たときは心が打ち砕かれる思いで、まだ頭から離れません。映画ではなく、現実の光景だからです」と説明した。「軽蔑は軽蔑を呼び、暴力は暴力を呼ぶ」トランプ氏は15年11月、関節の障害で腕の動きが制限されているニューヨーク・タイムズ紙の記者を念頭に、演説で腕をねじるような仕草をして障害者を侮辱したとして批判を浴びていた。このことが改めて蒸し返された形だ。その上で、ストリープさんは「こういった他人を侮辱しようとする本能が、公の舞台に立つ人や権力のある人によって手本として演じられるとすれば、皆の生活に浸透することになる。他の人にも同じことをして良いという、ある種のお墨付きを与えることになるからだ。軽蔑は軽蔑を呼び、暴力は暴力を呼ぶ。権力を持つ人がその地位を他者をいじめるために利用すると、我々はみんな負けてしまう」などとして、権力を監視するメディアへの支援を訴えていた。これに対し、トランプ氏は同日夜、即座に反応。ツイッターでストリープさんのことを「ハリウッドで最も過大評価された女優」「私のことを知らないもかかわらず、昨晩のゴールデン・グローブ賞で非難した。彼女は大敗したヒラリーの追従者だ」と3回にわたって酷評する内容を投稿。トランプ氏が障害のある記者を揶揄したことに触れたスピーチの内容についても「100回ぐらい言っていることだが、私は障害のある記者を『からかった』ことは一度もない(これからも決してそうすることはないだろう)。彼は16年前に書いた話を、私を悪く見せようとすり替えている。単に彼が「こびへつらう様子」を表しただけだ。非常に不誠実なメディアだ」と反論した。
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