2024年 4月 24日 (水)

小児ぜんそくの予防に「ビタミンD」? 発作の症状も軽くなる2つの最新研究

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   日本の小学生の3.69%がかかっている小児ぜんそく(2016年12月・文部科学省調査)。いたたまれない思いで、深夜の発作に苦しむわが子の背中をさすった親は多いだろう。

   最近、ぜんそくの症状を軽くしたり、予防したりすることにビタミンDが期待できるという研究が相次いで発表された。本当ならうれしい報告だが。

  • 激しいせきに苦しむ子ども(写真はイメージです)
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ビタミンDサプリで入院が必要な重い症状が61%減った

   ビタミンDは、魚介類やキノコに豊富に含まれている。また、日光に当たると体内で形成される。カルシウムやリンの吸収を助け、骨の健康を保つ働きがある。不足すると、子どもではくる病、大人では骨粗しょう症になることが知られている。

   このビタミンD にぜんそくの症状をやわらげる効果があるという研究を発表したのは、英ロンドン大学のチームだ。科学論文サイト「Cochrane database of systematic reviews」(電子版)の2016年9月5日号に論文を掲載した。

   同サイトのプレスリリースによると、以前から血液中のビタミンD濃度が低いぜんそく患者は症状が悪化しやすいことが知られていた。また、ビタミンDにはぜんそくを悪化させる風邪を予防する効果があるため、医師がぜんそく患者にビタミンDを処方することが一般的に行なわれている。そこで、研究チームは、ビタミンDをぜんそく患者に投与すると症状が軽くなるかどうか、ビタミンDを投与したケースを報告した過去の論文を改めて分析し直した。

   対象になった論文は、日本やカナダ、インド、ポーランド、英国、米国で行われた9件の研究だ。対象の患者は、子どもが425人、成人が658人だった。対象者は、通常のぜんそく薬であるステロイド剤に加え、ビタミンDのサプリメントを飲んだ人が多い。ビタミンDのサプリを飲んだ人と飲まなかった人を比べると、飲んだ人は症状が悪くなるリスクが37%減った。また、入院や救急受診が必要になるほどの重度の症状になるリスクも61%減った。つまり、普通のぜんそくの治療にビタミンDの摂取を加えると、ぜんそくの症状が軽くなるわけだ。ただし、なぜそうなるかは論文では明らかにしていない。

   研究チームは、この結果にまだ慎重である。論文の筆頭著者のエイドリアン・マーティノー博士は、プレスリリースの中でこう語っている。

「興味深い結果ですが、いくつか注意点があります。1つ目は、調査の対象者が、軽度または中等度のぜんそく患者がほとんどだったこと。そのため、重度のぜんそく患者にもビタミンDが有効かどうかは、今後の臨床試験で確認する必要があります。2つ目に、ビタミンDの効果は、ビタミンD濃度が初めから低い人に限られるのかどうかが、はっきりしていません。こうした疑問を調べるために、引き続き研究を進める必要があります」

「ゼイゼイ」「ヒュウヒュウ」苦しい呼吸が少なく

   ロンドン大学の研究は、ぜんそく患者がビタミンDをとると症状が軽くなるというものだったが、豪メルボルン大学が行なった研究は、ビタミンDを多くとると、子どものぜんそくの発症率が減るという研究だった。予防効果があるというのだ。アレルギー専門誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology」(電子版)の2017年2月号に論文が掲載された。

   同誌の論文要旨によると、子どものビタミンDの過不足は、血液中の「血清25(OH)D」の値を測ると分かる。そこで、研究チームは、ぜんそくのリスクが高い子どもを対象に10年間にわたり追跡調査した。出生時、生後6か月、1、2、3、4、5、10歳時に、血液を採取して「血清25(OH)D」値を測定し、その時にぜんそくを発症しているかどうか調べた。まだ、ぜんそくになっていない子どもたちの「その後」を調べたわけだ。

   その結果、生後6か月と2、3歳の時点で「血清25(OH)D」値が低い子どもほどぜんそくになりやすいことがわかった。また、「血清25(OH)D」値が低い期間が長い子どもほど、10歳になった時に「ゼイゼイ」「ヒュウヒュウ」というぜんそく特有の苦しい呼吸(喘鳴・ぜんめい)が激しくなり、湿疹や発作が起こる回数も増える傾向がみられた。

   ところで、子どもに食事でビタミンDをとらせるには、どうしたらよいだろうか。ビタミンDを多く含んでいるのは、アンコウやイワシ、ニシン、イクラ、サケなどの魚介類とキクラゲなどキノコだ。子どもの骨の成長に欠かせないが、摂りすぎると、高カルシウム血症や腎機能障害を引き起こす。このため、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準」(2015年版)の中で、1日に摂る「目安」と「許容限度量」を定めている。

   こども(0~14歳)では「目安」は年齢ごとに異なるが、2.0~6.0マイクログラム、「許容限度量」は20~90マイクログラムだ。20歳以上の成人の「目安」は5.5マイクログラム、「許容限度量」は100マイクログラムだ。文部科学省の「食品成分データベース」によると、イワシ1尾に含まれるビタミンDが32マイクログラム、ニシン1尾が22マイクログラムだから、魚介類をしっかりとる普通の食生活では心配ない。ただ、最も多いアンコウのキモは1切れ(50グラム)で55マイクログラムも含まれているから、食べすぎに注意したい。

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