2024年 4月 27日 (土)

日本が目論む「時間稼ぎ戦略」 対トランプ通商で奏功するか

   米トランプ政権誕生を受けて日米が開始に合意した「日米経済対話」が2017年4月中旬、スタートした。貿易をはじめとする日米両国の経済の重要事項を協議する場で、来日したマイク・ペンス米副大統領と麻生太郎・副総理兼財務相が、首相官邸でキックオフとなる会談を開いた。米国側スタッフの陣容が整っていないことなどから、今回は具体的な合意事項はなく、会合後に公表した共同文書も抽象論に終始した。

   ただ、スタッフが整わないなかでも米側は、トランプ大統領が主張する「貿易赤字の削減」のために通商問題で日本を揺さぶる姿勢を見せた。日本としては年内に開く次回会合に向け、「日米自由貿易協定(FTA)交渉の開始」など、日本に不利となる米側の要求をどこまで押しとどめられるかが課題となる。

  • 日米経済対話が始まり、米側の要求にどう応じるかが注目される
    日米経済対話が始まり、米側の要求にどう応じるかが注目される
  • 日米経済対話が始まり、米側の要求にどう応じるかが注目される

貿易案件が「3番目」から「真っ先」に

   日米経済対話は、安倍晋三首相が2月に米国でトランプ米大統領と行った日米首脳会談の成果として合意した協議の枠組み。麻生、ペンス両氏が日米双方のトップを務める。

   初会合で注目されたのは、「近いうちに成果を出す」として共同文書に記した3分野について、2月の首脳会談の合意に基づき、(1)貿易・投資のルール策定、(2)経済財政・構造政策、(3)インフラ、エネルギーなど相互に利益や雇用創出などがある個別分野――とした「順序」だ。首脳会談の際の文書では、このうち貿易ルールが最後の3番目に記述されていたが、今回は真っ先に書かれ、貿易が最も重要事項であるかのように読める。文書作成の経緯は明らかになっていないが、日本側が密かに懸念していたことでもあり、相手側の迫力に押された日本の姿が見え隠れする。

   トランプ政権としては、貿易赤字の削減のため、世界最大の経済力と軍事力を背景に「米国第一」の2国間通商協定を中国や日本と締結することが経済分野での重要な課題と位置づけている。中国については、4月7日の米中首脳会談において、米国の対中貿易赤字削減に向けた「100日計画」の策定に合意した。そもそも需要があるから米国側が輸入しているわけで、無理矢理中国がモノを米国に押しつけているわけでもない。それなのに、トランプ氏の主張通りに「貿易赤字削減」について具体的に期限を区切って計画を作ることにまで持ち込んだことは、米国にとって意味が大きいと見るのが自然だろう。

   それに比べると日本は、米側に押されている面はあるものの、「意外にしたたかだった」(外務省筋)との見方もある。トランプ政権は公約通り、環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱したが、日本はTPPをあきらめず、米国の復帰を待つ姿勢だったが、最近は、「ひとまず米国抜きの11か国でTPPを完成し、後に米国に再加入を促す」戦略に転換した。これは、TPP以上のレベルで農産物などの市場開放を迫られることが確実な米国との1対1の交渉をできるだけ遠ざける作戦だ。「日米経済対話」も、その「時間稼ぎ」の一環だ。今回、ペンス氏は会合後の記者会見で「(日米経済対話が)FTA交渉に発展する可能性がある」と日米FTA交渉に意欲を見せたが、「意欲を見せる」にとどまったままで時計の針が止まっているとも言える。

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