米マクドナルドが態度一変 「日本が最大の貢献者だ」

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   米マクドナルドが、計画していた日本マクドナルドホールディングス(HD)の株式売却を凍結した。2014年に発覚した鶏肉偽装問題などで業績が悪化し「お荷物」となったため、「保有する日本マクドナルドHD株50%のうち、33%を売却する」と2016年1月に表明していた。しかし、日本マクドナルドHDの既存店売上高が問題発覚前の水準に復活。むしろ世界のマクドナルドをけん引する勢いを持つに至ったことから売却方針を撤回したもので、日本人に意外に(?)根強い人気があることを印象付けた。

   米マクドナルドのケビン・オザン最高財務責任者(CFO)は、2017年1~3月期の決算を発表した4月25日の記者会見で、「日本事業は力強さを維持している。日本マクドナルドHD株の売却を中止する」と述べた。売却先には三井物産や投資ファンドなどの名前が挙がっていた。オザンCFOが売却中止の理由に挙げたのは、日本がグループ全体の業績改善に貢献したことだ。

  • 日本国内でマクドナルドは根強い人気だ(マクドナルド公式ホームページより)
    日本国内でマクドナルドは根強い人気だ(マクドナルド公式ホームページより)
  • 日本国内でマクドナルドは根強い人気だ(マクドナルド公式ホームページより)

鶏肉偽装問題発覚前に匹敵する水準に

   米マクドナルドの海外事業で、日本は鶏肉偽装問題発覚後、利益貢献度の低い「基礎的市場」のカテゴリーになっている。ところが1~3月期は、日本の「復活」によって「基礎的市場」の売上高が前年同期比で10.7%増と最も伸びた。オザン氏は「日本が最大の貢献者だ」と指摘した。他方、中国などの「高成長市場」の売上高は3.8%増、英国やカナダなど「国際リード市場」は2.8%増にとどまった。世界全体の既存店売上高が4%増であるだけに、日本が業績向上に「貢献」したのは間違いない。

   確かに、日本マクドナルドHDの業績回復は進んでいる。2016年12月期連結決算では、純利益が53億円と3期ぶりに黒字に転じた。その中でとりわけ2016年10~12月期の既存店の平均売上高は鶏肉偽装問題発覚前の2013年の同時期に匹敵する水準まで戻した模様だ。米マクドナルドの業績改善に寄与した2017年1~3月の既存店売上高は前年同期比15.5%増。こちらも、問題発覚直前の2014年の同時期に近かったようだ。月次の既存店売上高は、鶏肉偽装問題や異物混入問題の反動減が一巡した2016年1月から前年同月比で2ケタ増が続いている。

   日本マクドナルドHDのV字回復には、「不祥事に対応する初動が鈍い」などと評判の悪かったサラ・カサノバ社長が進めてきた改革の効果が現れていることも貢献している。2015、16年に全店の3分の1にあたる約1000店で大規模な改装を行った。これによって客足が遠のいた時の店のイメージを払拭する効果があったという。並行して改善が見込めない不採算の約130店は閉鎖した。

株売却を中止、今後の展望は...

   メニューについても新商品を従来の2倍のペースで投入するなど、攻めの姿勢を貫いた。コンビニとの競争関係にあるコーヒーは2017年1月にリニューアルした。昨年夏に投入されたスマホゲーム「ポケモンGO」との協業など話題作りも怠らなかった。

   カサノバ社長は「満足していない。2017年は成長の段階に入る」として改革の手を緩めていない。改装は2017年もより大規模に続けており、同年末には全店の8割で改装を終える予定だ。新メニューにも力を入れており、8年ぶりの大型バーガーの新商品で「肉厚」にこだわったという「グラン」シリーズを4月に発売した。通常のハンバーガーに比べて1.7倍の「肉厚」で、主力の「グランクラブハウス」の価格(単品)は税込み490円とやや強気の設定だ。2016年試験的に投入した「1.7倍肉厚」バーガーの消費者の反応が良かったといい、日本マクドナルドHDは「高くてもおいしいものを食べたい需要がある」としている。

   米マクドナルドの「株売却中止」には業績改善もさることながら、日本マクドナルドHDの株価が上昇していることも影響したようだ。2016年1月の売却方針公表後から株価は上昇基調にあり、同年夏にはポケモンGO効果もあって過去10年で最も高い水準(3875円)に。その後やや落ち着いたとはいえ、2017年4月20日には年初来高値の3450円を記録。2016年1月の2500円前後からは3割以上高いゾーンにある。買う側にすれば売却予定は33%と経営権を握れるわけではないこともあり、株価が高くなって売りにくくなったという事情もあったとみられる。

   ただ、今回はあくまで「売却中止」であり、売却を完全に取り下げたわけではない。米マクドナルドは世界的にリストラを継続しており、今後の業績や株価次第では「日本」の売却計画が再び頭をもたげる可能性も否定できない。

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