株主総会での賛否を個別開示 生真面目なアノ信託銀、慎重な某生保

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   三菱UFJ信託銀行など大手信託銀行は、投資先企業の株主総会で「取締役選任」などの議案採決で議決権を行使した際の、個別議案の「賛成・反対」の内容を開示する。2017年3月期決算の企業が6月に相次いで開く株主総会の対応について、8月には開示することで各行の足並みがそろう。監督官庁の金融庁の意向に沿った取り組みだ。ただ、資金を預かって運用する組織として同様に「個別開示」を求められている生命保険業界などの一部は必ずしも公表するつもりはなく、対応が分かれる形になっている。

   信託銀行は、年金基金などの投資家から運用を委託されて資金を預かるのが主な仕事の1つだ。ただ、一般の商業銀行などと同様、企業や個人へのお金の融資も行っている。そうなると、お金を預かって資産運用を代行する者として企業の株式に投資する際、その同じ企業に独自に資金を融資していることも珍しくない。資金の融資先企業は「お金を借りてもらって利子をいただく大事なお取引先」なわけだが、信託銀行にお金を預ける年金基金などからすれば、「手心」を加えずに投資先の経営をきちんと監視してもらわねば困るということで、「利益相反」が生じやすくなる。

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機関投資家向けの行動指針を改定

   そこで、個別議案への「賛成」「反対」を開示することで、「なあなあではなく、しっかり経営を監視しているか」が白日の下にさらされ、利益相反の疑いを少しでも晴らすことにつなげようとの狙いもあるわけだ。積極的な議決権行使で投資先企業の価値を高めることになれば、投資家、運用者、投資先企業が全体としてハッピーということもある。

   金融庁は「スチュワードシップ・コード」と呼ばれる、信託銀行や生命保険のような機関投資家向けの行動指針を改定し、5月に公表した。英国を参考に2014年2月に策定したものをバージョンアップした。改定版のポイントは「投資先企業との対話の強化」。議決権行使結果の開示の充実はその最重要事項だ。従来は、取締役の選任や役員報酬といった主な議案ごとに議決権を行使した結果を集計して開示することになっていたが、個別の企業ごとの議案への賛否は分からなかった。

   そこで改定版は議決権行使の「個別開示」を促すことにした。背景には「集計開示」では不十分との声が市場関係者からあがっていたことがある。例えばトヨタ自動車が2015年に発行した個人投資家向けの「種類株」。「5年間売却できない契約のため、経営監視力に影響がある」として海外の投資家には反対票が多かったが、国内の機関投資家は大半が賛成したとされる。国内投資家がトヨタへの「おつきあい」を重んじたかどうかは不明だが、個別開示すればそうした不透明さも、少しは拭えるというわけだ。

公表できない場合も罰則はなし

   改定版ではそのほか、資産運用者に議決権行使を監視する第三者委員会の設置なども促した。年金基金のような「資金の出し手」に対しては、信託銀行のような運用委託先とその投資先企業との対話の状況をチェックすることが必要とした。

   大手信託は三菱UFJ信託のほか、三井住友信託銀行、みずほ信託銀行、それに信託業務を手がけるりそな銀行の計4行だ。なかでも個別開示で生真面目さが際立つのが三菱UFJ信託。4行のうち、いちはやく5月31日に投資先企業の株主総会での個別議案の賛否を公表した。対象は2016年7月から17年4月末までの株主総会。約450社が対象で議案数は約1500、議案への反対率は13%。当初は8月に開示する予定だったのを前倒しした。三菱UFJ信託以外の信託3行は8月に公表する予定だ。

   三菱UFJ信託の公表文によると、三菱自動車が2016年12月に開いた臨時株主総会で、三菱UFJ信託は、三菱自動車の益子修社長や、三菱重工業の宮永俊一社長、三菱商事の小林健会長ら5人を三菱自動車の取締役に選任する議案に反対した。三菱グループのつながりより、お金を預かる運用者の立場を優先する姿勢を明確にしたようだ。同じ三菱グループから社外取締役に登用される宮永氏と小林氏は独立性に疑いがあると判断したとみられる。

   一方、生命保険では第一生命と住友生命が今17年秋の公表を表明しているが、日本生命などはなお態度を明らかにしていない。資産運用業界でも野村アセットマネジメントや大和証券投資信託委託が5月までに公表したが、外資系の一部は公表を見送ると報道されている。スチュワードシップ・コードは、公表できない場合は理由を説明せよとしているが、法律ではないし、当然罰則もない。このように対応が分かれることに、年金基金、また金融庁がどういう反応を見せるのか、注目されている。

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