2018年 7月 19日 (木)

岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
NYの「例外」スタテン島に行ってみた(完)

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   「Donald Trump-loving Staten Island is New York's Idaho(ドナルド・トランプを愛するスタテン島は、ニューヨークのアイダホ)」――。

   ニューヨークの地元紙の見出しでも、このように謳われるスタテン島。民主党支持者が圧倒的に多いニューヨーク市で、この島は例外的にトランプ支持者の割合が高い。スタテン島は、マンハッタン最南端からフェリーで南西に25分。香川県の小豆島とほぼ同じ広さで、マンハッタンの人口の3割弱にあたる48万人が住んでいる。

  • サムの家の前に掲げられた最初の「T」のオブジェ
    サムの家の前に掲げられた最初の「T」のオブジェ

焼かれた「T」のオブジェ

   トランプ支持者はとくに島の南岸に多く、8割近い住民がトランプ氏に投票した地区も少なくない。私がこの辺りを訪ねた時、最初はトランプ大統領の話になると口を閉ざした支持者の男性が、誇らし気に語り始めた事件がある。

   男性の妻が、「普通だったら大統領選の前には、支持者の看板が家の前に立てられるのに、この辺りでもトランプ支持の看板はあまり見かけなかったわ」と話した時だった。

   2016年5月、スタテン島在住の眼鏡技師、サム・ピロゾロ(53)は、自分の家の表庭に「T」の文字を型取ったオブジェを設置した。トランプ支持を表明するためだ。

   高さ3.7m、幅2.4mと巨大で、全面に星条旗の模様が施されている。夜間はライトアップされ、かなり目立った。

   同年8月7日午前1時頃、娘がサムを起こしにきた。「玄関のベルが鳴ってるよ」。

   ドアを開けると、「T」がオレンジ色の炎に包まれていた。近所の人がベルを鳴らし、知らせてくれたのだ。

   オブジェを作ったのは、この島に住む保守派のアーティストだ。サムは、このオブジェ以前の作品にも、展示の場として表庭を提供してきた。

   ちょうど10年前に、同じ家が火事でほぼ全焼したことがあったため、恐怖とショックは大きかったという。

   昨年の事件を振り返り、サムは私に語った。

「あの頃、TRUMPの文字入りのTシャツを着ているだけで、殴られたり叩かれたりする事件が盛んに報道されていた。攻撃される恐怖を感じることなく支持を表明できるように、『Trump』の名前を出さないオブジェを思いついたんだ。『T』はトランプの頭文字だが、tolerance(寛容)の「T」でもある。それなのに、こんな事件が起きるなんて、皮肉だろう?」
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