財界の改憲論議がトーンダウン 安倍政権の「安定度」変化うけ

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   経団連、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体の夏季セミナーや夏季フォーラムが2017年7月、長野県軽井沢町や東京都内で開かれた。このうち経団連と経済同友会は憲法問題を議論したが、自民党の都議選敗北や安倍政権の支持率急低下で改憲ムードが遠のいたことを受け、経済界の改憲論議は盛り上がらなかったようだ。

   経済同友会は7月14日、長野県軽井沢町で毎年恒例の夏季セミナーを開き、憲法問題を議論した。この問題を全国紙で唯一、詳しく報じた毎日新聞の記事によると、自民党内で検討が進む憲法9条の見直しや教育の無償化をめぐっては明確な方向性は出なかったという。小林喜光代表幹事は記者会見で「年内に憲法改正の論点はまとめるが、提言とはならないかもしれない」とトーンダウン。同友会は年内にも改憲に向けた提言をまとめるかと思われたが、慎重に検討を進めることになった。

  • 安倍内閣の支持率低下は財界にも影響したようだ(画像はイメージ)
    安倍内閣の支持率低下は財界にも影響したようだ(画像はイメージ)

経済政策を最優先に

   憲法9条をめぐっては、安倍晋三首相が5月、戦争放棄をうたった1項と戦力不保持を定めた2項を維持したまま、新たに3項を設けるなどして自衛隊を明記する考えを表明した。セミナーでは「首相から加憲の提案があるが、2項を国民にわかりやすく変えるのがよいと思う」などの意見が出たが、少数にとどまったという。

   同友会は4月、小林代表幹事が2009年以来8年ぶりに改憲問題を議論する「憲法問題委員会」を設置する考えを表明した。経営者が個人の立場で参加する同友会は、大企業代表の経団連よりも自由闊達な議論で知られるが、今回は「憲法9条などは個人の思想信条にかかわる問題だ」など慎重論が目立った。いつもは雄弁な経営者たちも、憲法問題では自民党に先行するような議論を避けたようだ。

   一方、「財界の総本山」とされる経団連は7月21日、長野県軽井沢町で開いた夏季フォーラムで憲法問題を議論した。こちらも毎日新聞によると、憲法9条をめぐり「条文の解釈ではなく、時代の変化に合わせ自衛隊の存在を明記すべきだ」という意見が出たが、実際に9条をどう改正すべきかなど具体論には踏み込まなかったという。

   榊原定征会長は記者会見で「改憲論議は必要と思っているが、国民の理解、支持が得られることが前提になる」と述べ、支持率が低下する安倍政権をけん制した。経団連には安倍政権に対し、「改憲論議よりもデフレ脱却など経済政策を最優先に取り組んでほしい」との思いがあるからだ。

都議選、仙台市長選...

   榊原会長は安倍首相が5月、憲法を改正する考えを表明したことを受け、年内に憲法改正に向けた提言をまとめる考えを示していた。だが、榊原会長は今回の会見で「5月の時点と政権の安定性が違っている。年内に提言を出すかどうかは議論を深めて決めたい」と述べ、事実上、結論を先送りする考えを示した。

   安倍首相は今秋の臨時国会に自民党の憲法改正案を提出する方針を示しており、経団連はその日程を意識して憲法改正に向けた提言をまとめる考えだった。しかし、東京都議選に加え、7月23日投開票の仙台市長選でも自民党が敗北。各報道機関の世論調査でも安倍政権の支持率低下が目立ち、改憲日程にも影響を与えるのは必至の情勢となった。

   今回、経団連、経済同友会とも、安倍政権に先行して憲法論議を進めるのは得策でないと判断したようだ。日本商工会議所は5月の安倍首相の改憲方針表明後も、憲法問題を議論する考えを示しておらず、東京都内で開いた夏季セミナーでも議論はなかった。

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