麻薬より儲かった中国のICO 全面禁止までの狂乱バブル

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   中国のICO(新規仮想通貨公開=イニシャル・コイン・オファリング)市場の狂気は「瞠目結舌(あっ気にとられ、ものも言えない)」という4文字でしか形容しようがないものだった。

   ついに中国の通貨当局はICOの全面禁止の措置を取った。

  • 中国人民銀行
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「新規仮想通貨公開」というフィンテック

   2016年夏、Straitsという会社がICOを通して自分のトークン・マネー(代替通貨)を発行したが、17年8月20日までに、このトークンの価格は既に101,168%、1000倍余に上昇した。

   これはまだ最高記録ではない。NXT公司が16年に発行したトークンは、現在既に、672,989%、7000倍近くに上昇している。になっていたはずだ。

   ICOは「initial coin offering」略語で、企業がブロック・チェーン技術を使って、デジタル・トークン(Digital tokens)を発行し、投資家に対してバーチャル・カレンシーを募る融資活動のことである。

   ICOは「低級版IPO(Initial Public Offerings)」とも形容される。プロジェクトの運営側は、ブロック・チェーンと連携してウェブサイトを立ち上げ、プロジェクト白書を発信し、ビット・コイン、イーサリアムなどのクリプト・カレンシー(暗号通貨)を含むデジタル資産のクラウドファンディングを、プロジェクト投資に向けさせる。融資終了後、プロジェクト運営側は、これらの投資家に株券と同じように、自社のバーチャル・カレンシーを放出する仕組みである。最も早い時期に、アメリカ人が作り出したマスターコイン(Mastercoin)がその一例である。

   インターネット金融と同様、ICOも一種のフィンテック(金融新技術)である。しかし、ネット金融と同様、中国ではいかなるフィンテックでもあっという間に盛大な投機と賭博に変質するように、ICOも例外ではない。

「天からお札が降ってくる」

ICOがもたらす収益率は、一般投資家の常識を徹底的に覆した。『網易科技』は、あるベテラン投資家の言葉を引用して次のように総括している。「ICOの暴利は既に麻薬密売を上回った。帳簿上の数字はウナギ登りで、『天からお札が降ってくる』ようだ」

   17年に入ってデジタル・カレンシー市場は爆発的だった。ビット・コイン投資は、収益率が300%以上。イーサリアム投資は、収益率が500%以上で、ICO投資は、収益率がしばしば100,000%、千倍に達する。

   ICO市場の巨大収益率に目を引かれて、投資家たちは狂ったように殺到した。

   中国国家インターネット金融リスク分析技術プラットフォームが発表した『2017上半期国内ICO発展状況レポート』は2017年上半期に、「国内にはすでに完成したICOプロジェクトが合計65件あり、融資規模は人民元換算で26.16億元(約444億円)に達し、延べ10.5万人が参加している」ことを明確に示している。

   しかし、この数字はかなり控えめで、金融科学技術分析研究機関Autonomous NEXTの統計によると、「国内のICO参与人数は200万人に達している」

   すべてのICOプロジェクトがまともだとは限らない。網易によると、金色財経の最高経営責任者(CEO)で、火幣網創始者の杜均は17年4月から大量のICOプロジェクトと接触してきたが、多くのグループが若者で構成され、ビジネスプランは持っていても他は何もなく、ビジネスプランにも問題があるのに、すぐICOを通して金もうけをしようと考えていた。

   追夢者基金(ドリームファンド)創始者、創新谷(イノバレー)創始者の朱波は微信(ウイーチャット)モーメンツで「深く知り、理解すればするほど、ひやりとさせられる」として次のように指摘していた。「1年たたないうちにICOというこの巨大なバブルは崩壊すると思う。なぜなら、現在、ICOを大量に発行している会社は、その大部分のプロジェクトと会社は、いずれも現在の主流投資家から先行きは良くないとみられており、健全でないICO発行プラットフォームはプロジェクトと会社の質を全く顧みず、狂ったように手数料を集めようとしているからだ」

「このビット・コインの狂騰とICOの氾濫は、2015、2016年の株価暴落の災難が、今度はICOとビット・コインで再演するのではないかと思わせる」

「経済と金融の秩序を著しくかき乱した」

   中国の監督管理当局者は理性を失った市場をじっと注視してきた。

   『第一財経日報』の報道によると、中国証券監督管理委員会(証監会)は、一部ブロック・チェーン企業を対象にICOに関するアンケート調査を行った。これは、バーチャル・カレンシーの名目で行われているマルチ商法詐欺のICOプロジェクトに対して、証監会が並々ならない関心を示していた証拠だ。

   8月24日には、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)は『違法資金調達に対する処置条例 (公聴草稿)』を起草し、一連の違法資金調達に処置権限を持つ部門が着手している調査状況を列挙した。これらのなかには、バーチャル・カレンシーの名目で行われている資金調達行為も含まれていた。

   銀監会は次のように指摘していた。「現在、違法資金調達は一般大衆の預金の直接吸収、投資財テクなどを主として、バーチャル・カレンシー、消費キックバック、私募株投資などの名目の違法資金調達が頻々と現れ、その様は次々新しいものとなり、詐欺性が濃厚で、見分けるのが困難である」

   8月30日夜には、中国インターネット金融協会が以下のようなリスク情報を発表した。「国内外の一部機関が、誤解を招きかねない各種の宣伝手段を採用してICO名目の融資活動に従事しているが、詐欺の疑いがあり、違法に証券を発行し、違法に資金調達行為を行っている」

   監督管理当局の「襲撃」を察知したのか、国内で有名なICOプロジェクト・プラットフォームであるICOINFOは、8月30日、次のように発表した。「リスク防止のため、即日、自主的に一切のICO業務を暫時停止し、関連部門の監督管理政策の発表後に、政策、ルールに基づいて業務を展開する」

   そしてついに、9月4日、中国人民銀行と工業・情報化部が通知を出して、ICOは銀行法や証券法などに照らし、「無許可で非合法の融資行為」とし、「経済と金融の秩序を著しくかき乱した」として全面的に禁止した。ICOバブルはこれで終局を迎え、ビット・コインなどの仮想通貨は急落した。ただ、ICOバブルの背後にある金満現象、金融政策については現在のところまったく詰問されないままとなっている。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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